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サクランボが似合う沢田研二(ジュリー)~島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

島田洋七
島田洋七 (C)週刊実話Web

桂三枝(現・桂文枝)さんが司会を務めた人気番組『ヤングおー!おー!』で、俺らB&Bは番組の前説を担当していたんです。前説は本番が始まる前、会場の雰囲気を和ますために漫才を披露するんですよ。前説を終えて俺らが舞台袖にはけると、出演する歌手が出番を待っているから、その人たちとよくしゃべったりしていましたね。

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あるとき、いつも通り舞台袖にはけると、椅子に座りサクランボを食べている人がいた。顔を見ると飛ぶ鳥を落とす勢いのチェリー、いやジュリーこと沢田研二さんだった。まさかジュリーがサクランボを食べているとは思わないし、むちゃくちゃオーラがあるんです。

話しかけられないでいると、沢田さんから「漫才おもしろいね」と声をかけてくれた。「俺らの漫才は放送では流れないんですよ」、「え、どうして?」、「前説は本番前にお客さんを温める役なんです」、「面白いから本番でも流してもらえばいいのにね」。サクランボを食べながら沢田さんにお褒めの言葉をもらいました。

俺はあまりにサクランボが気になったから「サクランボばかり食べるんですか?」と聞いてみたら「歌う前に食べるとお腹が張って歌えないからね。それに太ったら歌手は見た目が悪いから」と話していましたよ。続けて「君たちも果物を食べたほうがいいよ」とサクランボをケースごとくれたんです。

やはり、スターは違いますね。太ってはいけないから体にものすごく気を遣っているんだなと感心しましたよ。その点、漫才師はそんなこと気にせず腹が減るとよく食べてましたからね。

その後もジュリーさんの教えを守って…

収録が終わると、弁当が10個くらい余っていた。ディレクターから「弁当を持って帰りなよ」と勧められ、俺らは2個ずつ持って帰ろうとしたら、通りかかった沢田さんに「2個も持って帰るの? でもね、舞台に上がる前は食べないほうが良いよ」とアドバイスされました。それ以来、舞台でも講演でも楽屋には弁当やいろんな食べ物が置いてあるけど、俺は食べないようにしていますね。

お腹が空いているほうが頭がスッキリしているんですよ。逆にお腹が一杯だと血流が良くて眠気を感じるんです。その後、俺らも売れて音楽番組の『ハナキンスタジオ』で沢田さんに会った際、そのことを伝えると「スッキリするでしょ」と同感されましたね。

その後も新幹線のグリーン車で何度か沢田さんに会いました。私服でもかっこいいですよ。帽子を被り、サングラスをかけてね。しかも、あれだけのスターになると、マネジャーさんに付き人、専属メイクさんなどが周りにいますからね。

一度、新幹線の名古屋駅で降りる準備をしたら、沢田さんを見かけたんですけど、席が遠くて話しに行けなかった。しかも、沢田さんの前に座っていたのが海部俊樹元総理大臣でしたよ。ジュリーの前に元総理大臣…珍しい光景でしたね。前にも書きましたけど、新幹線のグリーン車ではいろんな有名人に会いますね。

紳助にアドバイスされたんですけど、野球帽だけを被るのが一番目立たない。それ以来、俺も被ってますよ。グリーン車で目立つ変装をしている人を見かけたら、大抵は有名人ですよ。

島田洋七
1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。

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