『ヤクザ2000人に会いました!』宝島社/1540円
鈴木智彦(すずき・ともひこ)
1966年生まれ。暴力を取材テーマにしたいと考え、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社し、フリーライターに転身。著書『ヤクザと原発』(文藝春秋)、『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(小学館)などを出版。
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――ヤクザ業界はなり手が減っているそうですが、これまで取材した2000人の中でも、やはり若い世代は少なかったですか?
鈴木 1995年からヤクザの取材をしていますが、当時はいました。仲良くなったのも20代の組員たちです。若い組員の姿を見かけなくなったのは2005年ごろから。徐々にそうなった印象で、トドメになったのはやはり暴排条例です。
――ヤクザの高齢化が進む中、取材相手で今も存命なのは何人くらいですか?
鈴木 数を気にしたことはありません。亡くなった人よりは、やめていった人が圧倒的に多い。自殺した人も結構います。書籍タイトルの2000人という数字は、通算、100組織は取材でお邪魔したし、事務所に行けばざっと20人程度とは会うので、誇張にはならないと判断して決定しました。仲のいい人が抗争で殺されると、取材相手だからと距離を置いていても悲しみと喪失感がすごい。これまで20人以上殺されたはずです。抗争だから、殺した側も知り合いというケースがあって、感情が追いつきません。
ヤクザ好きの丸暴はたくさんいる…
――著書で、警察とヤクザについて「求められる資質が一緒なのかも知れない」と書かれていますが、中にはヤクザに心酔する警察官もいるのでしょうか?
鈴木 本当の姿をそう易々と外部の人間に見せません。でも、情報の流れ方を見ていると、表沙汰になったら警察上層部が飛ぶんじゃないか、という事例が結構ある。ヤクザ好きのマル暴(ヤクザ担当の刑事)はたくさんいました。古巣の『実話時代』というヤクザ専門誌でも、数人の刑事さんから捜査資料や押収した代紋バッジをずいぶんもらいました。中にはレプリカまで作って、額装の中に古今東西のヤクザの代紋をディスプレーしてる人もいました。
――ヤクザとその家族についても目にしてきた中で、彼らの稼業とは違う顔を見る場面もありましたか?
鈴木 家族ぐるみで付き合っている人はわずかです。若い衆からは「オヤジ」と呼ばれるので、差別化するためか、家庭で「パパ」と呼ばれている人が結構いる。普段は使い分けできているのでしょうけど、自分という異分子がいてバグったのか、事務所で『パパな~』と言っちゃって、若い衆が笑いを堪えていました。
――原発や密漁という表沙汰にならなかった「一般社会とヤクザの繋がり」も取材していますが、次に臨みたいテーマはありますか?
鈴木 書籍の企画はもう10冊分決まっているのですが、遅筆だし、もう57歳で若い頃のようには動けないので、何も書けないまま終わるのかもと思ったりします。
(聞き手/週刊実話編集部)
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