『酷道大百科 激狭、断崖、未舗装…愛おしい「国道」全53本』実業之日本社 /1980円
鹿取茂雄(かとり・しげお)
1977年生まれ。工業薬品メーカーで会社員として研究開発業務に従事する傍ら、酷道の趣味が高じて全国の酷道や廃墟を取材している。『TEAM酷道』を主宰。
――〝酷道〟とは一体、どんな道なのでしょうか?
鹿取 日本に数ある道路の中で、最上級に位置づけられる国道。国道であるにもかかわらず道幅が狭くて対向車とすれ違うことができなかったり、落石や倒木が転がっているなど状態が酷い道路のことを〝酷道〟と呼んでいます。
――〝酷道〟を走るようになったきっかけは、なんだったのですか?
鹿取 免許を取って初めてドライブに出かけたのが国道157号でした。走っていると道幅がどんどん狭くなり、初心者なので不安になってきたとき、「危険! 落ちたら死ぬ」と書かれた看板まで現れて、死にそうな気持ちになりました。後で調べると日本でも有数の酷道だと知り、それがきっかけで酷道の世界に足を踏み入れました。
――印象深い酷道を紹介してください。
鹿取 四国を横断する国道439号、通称〝ヨサク〟でしょうか。439号はとにかく長いのが特徴で、徳島市から高知県四万十市に至る四国最長の国道です。近年、改良工事が進み、酷道区間は減りつつありますが、ただ酷いだけでなく、そこに住む人たちの生活感が感じられることも大きな魅力です。走破に4日間かかりました(笑)。
いざというときに役立つ装備や食料を
もう1本挙げるとしたら、長野県上田市から静岡県浜松市に至る国道152号ですね。歴史の深い街道を踏襲していることも面白いのですが、途中に国道が繋がっていない分断区間を2カ所も抱えています。世界的に見ても珍しいほど崩れやすい地質のため、トンネルを掘ることができず、50年近く分断されたままなのです。道路地図に「日本のトンネル技術が敗退」とまで書かれていました。ところが近年になり、トンネル工事に着工し、2025年には開通する予定です。今が旬の酷道と言えるでしょうね。
――酷道を走る上での注意点などはありますか?
鹿取 酷道を訪れるには、危険が伴います。崖下に転落して死亡するという痛ましい事故も実際に発生しています。私が言うのもなんですが、初心運転者はなるべく酷道を避けるのが無難でしょう。また、酷道とはいえ、生活や仕事で利用されている方もいます。訪れる際には、いざというときに役立つ装備や食料、それに譲り合いの心を常に持っておきたいものです。
道路は便利で快適なほうがいいですが、それが楽しいかどうかはまた別問題。ゆっくりとしか走れない酷道だからこそ、見える景色があります。だからこそ、たまには急がず、のんびりと酷道を走ってみてはいかがでしょうか。
(聞き手/程原ケン)
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