社会

トルコ大地震が警告!地震国・日本が抱える「2つの巨大断層」に見る“危険地域”

Damir Khabirov
(画像)Damir Khabirov/Shutterstock

2月6日、トルコ南東部で発生したマグニチュード(M)7.8の巨大地震は、これまでに4万1000人以上が死亡(2月15日時点)。現地ではいまだに救助活動が続いているが、この惨事はわが国にとっても対岸の火事ではない。大地震が頻発する仕組みが、ひどく似通っているからだ。

その最大の類似点は、断層の複雑さだといわれている。日本同様、世界有数の〝地震国〟であるトルコには「アナトリアプレート」、「ユーラシアプレート」、「アラビアプレート」、「アフリカプレート」なる4つのプレートがせめぎ合い、これまでもM7級の地震が発生。さらに、南東部には「東アナトリア断層」と呼ばれる大規模な断層が南西と北東に延びているという。

【関連】新潟の「イワシ大量打ち上げ」は巨大地震の前兆か?フォッサマグナの不気味な“沈黙” ほか

外信部の記者が言う。

「2月6日の大地震は、数百キロもあるこの断層のうち、南西方向の端にある200キロほどがズレて起きたと推測される。震源の深さが17.9キロと浅かったため大きな被害をもたらしたが、今後は誘発された周囲の断層が動き、同じ規模の地震が続く可能性も高いのです」

実際、現地ではその後M5〜6級の余震が頻発。さらに、最初の地震から約9時間後には、95キロ離れた場所を震源とするM7.5の大地震が起きた。

また今回は揺れなかったものの、トルコには「北アナトリア断層」と呼ばれる恐ろしい断層も存在する。1000キロもの長さを持つこの断層は、約80年前に東から西へと巨大地震を続発させた過去があるのだ。

よく似た断層が日本にもある

武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が言う。

「最初は1939年に、断層の東端に近い地点でM7.8の地震が起きた。阪神・淡路大震災より大きな直下型でしたが、1942年から3年続けて西へ震源を移しながら、M7級の大地震を起こしていったのです」

巨大地震はその後、収束したかに見えたが、1957年になると1944年の地震の西側で発生。1967年にもM7クラスの地震が起きた。まるでドミノ倒しのように、大きな地震が続いたのである。

「その後は、1999年8月にも巨大地震が発生。M7.6を記録した同地震では、北アナトリア断層上の都市・イズミットで、1万5000人以上が死亡しました」(前同)

もっとも、恐ろしいのはこうした現象がトルコに限らないことだ。実は、日本にもこれとよく似た断層が存在しているのである。

「それが九州東部から関東まで、日本列島を横断している『中央構造線』。全長1000キロを超えるこの巨大断層は、南海トラフ(=フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界線にある海底の浅い溝)と並び称される危険なものなのです」(科学ライター)

事実、この断層は北アナトリア断層と同じく、地震を続発させた過去を持っているという。科学ライターがこう続ける。

「中央構造線が猛威を振るった顕著な例は、1596年のことで、この年の9月に異なる場所で3つの巨大地震を引き起こした。しかも、これらはわずか5日のうちに起きているのです」

誘発されると何が起こるか…

1596年9月1日夜に起きた慶長伊予地震は、愛媛県を揺るがした大地震。また、3日後に豊予海峡を挟んだ大分県で発生したのが慶長豊後地震で、M6.9〜7.8級のこれら地震と津波により708人の死者が出たという。

さらにその翌日、関西を襲ったのがM7.5の慶長伏見地震。同地震は、なんと豊臣秀吉が築いたばかりの伏見城の天守を倒壊させたと伝えられている。

こうした地震の連鎖が起きたのは400年以上前の話だが、それを「昔話」と無視できないのは、今でも再燃の可能性があるからなのだ。

「カギを握っているのは南海トラフです。中央構造線と平行に走る長さ700キロに及ぶこの溝を震源とする地震は、今やいつ起きてもおかしくない状況。しかもここにきてトラフの西側で地震が起きると、続けて東側でも大地震が起こるメカニズムが解明された。中央構造線と南海トラフのどちらかが揺れれば、誘発されて双方で大地震が発生する可能性もあるのです」(同)

また、前出の島村氏はこう話す。

「2016年の熊本地震以降活性化していると見られる中央構造線は、都心を走っている可能性があるため、南海トラフ地震が起きれば遠からずして首都直下型が発生することもあり得る。九州から関東まで延びる中央構造線は、関東ローム層に覆われて都心では見えないが、誘発されると何が起こるか分からないのです」

気になるのは、もしも一方で地震が起き、もう一方が誘発された場合、どことどこで巨大地震が発生するかだが、その見極めはかなり難しいようだ。

「中央構造線は大分、熊本、四国北部を突っ切り、長野、そして関東圏に達している。最も警戒が必要なのは甚大な被害が予想される首都圏だが、名前を挙げた県の大半は過去に震源地となったことがあり、断層がズレる特徴を持っている公算も大。また、南海トラフ地震では愛知、静岡、大阪が最も警戒されているのです」(科学雑誌記者)

世界有数の断層とトラフを持つわが国は、まさに火薬庫へとつながる導火線を2つ抱えているのと同じ。その意味では「東アナトリア断層」と「北アナトリア断層」を有するトルコ同様、各地で大地震が頻発する可能性を秘めているのである。

あわせて読みたい