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確率は96%!? 巨大M8級『南海トラフ地震』が東西で続けて発生する恐れ

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南海トラフ地震は、いつ、どんな形で発生するのか。

この疑問は日本人なら誰もが知りたいテーマだが、このほど南海トラフの東西どちらかでマグニチュード(M)8以上の地震が発生した場合、もう片方の側でも巨大地震が起こる確率が最大96%もあることが発表された。つまり、続けざまに巨大地震がやってくるというのである。

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この研究結果を国際科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に発表したのは、東北大や東京大、京都大の研究チーム。

南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘にかけて延びるトラフ(海底の溝)で100〜150年周期に起こる地震だが、同研究チームは過去の事例を検証。信頼度の高いデータが揃った1361年以降の履歴を基に、南海トラフ地震が連続発生する確率と最初の地震からの経過時間を試算したという。

その結果、M8クラスの巨大地震が連続的に発生する確率は、最初の地震から6時間以内では1〜53%(=平常時の1300〜7万7000倍の確率)、1週間以内では2.1〜77%(同100〜3600倍)、3年以内では4.3〜96%(同1.3〜29倍)もあることが判明した。数値の幅が広いのは地震の回数が限られており、絞り込みが難しいからだという。

防災ジャーナリストの渡辺実氏が言う。

「M8級の巨大地震発生後、町が灰燼に帰した人々に『間を置かずデカいのがくるから注意しろ!』とはなかなか言えない。どう対策すればいいんだと皆頭を抱えてしまうだろうし、この研究結果を見る限り日本が無くなってしまう気さえする。毎年4兆円もの防衛費が必要だと言う岸田総理は、迫りくる地震対策にも目を向けてほしいものです」

連動して起こる“半割れ”現象

もともと南海トラフ地震は、今回の研究結果が発表される前から東海、東南海、南海の3つの震源域が数時間から数年を経て、あるいは時を待たずに連動して起こるといわれてきた。そのキーワードとなるのが、〝半割れ〟という現象なのだ。

科学ライターが言う。

「1707年の宝永地震のように、南海トラフ全域のプレートが一気に動くケースと東側と西側が連続して動き、地震をもたらす半割れ型があるのです。この半割れの典型が1854年の安政南海トラフ地震で、東で安政東海地震が発生してから約32時間後に、西で安政南海地震が発生した。昭和の南海トラフ地震も1944年に東側で昭和東南海地震が起き、約2年後に西側で昭和南海地震が発生したのです」

また、こうした現象には政府も警戒を強めており、内閣府は2018年に南海トラフ地震に関するガイドラインを作成し、大規模地震の前兆を公表。その中で「半割れ地震」は巨大地震の誘発を高めるとして、発生から1週間を「巨大地震警戒対応期間」とする方針を示したほどだ。

東京大学の平田直名誉教授は、今回の研究結果を踏まえ会見でこう話している。

「今のところは南海トラフで巨大地震が起きることを示すようなデータはなく、平穏な状態が続いている。ただ、同時にこれはいつ地震が起きても不思議ではないことを示すもので、引き続き備えを進めることが肝要です」

岩盤割れを指摘する異臭騒ぎ

現在、南海トラフを震源とする半割れ地震の明らかな兆候は、東海、東南海、南海のどの震源域にも見られないが、この平田名誉教授の指摘は的を射た意見と言わざるを得ない。なぜなら巨大地震を誘発する半割れ地震は、さらに他の地震によってもたらされる可能性も秘めているからだ。

武蔵野学院大学の島村英紀特任教授が言う。

「以前も話したが、南海トラフ地震はフィリピン海プレート上で発生した地震に誘発されて起きる可能性もある。というのも、このプレートは1万キロの長さを持つ太平洋プレートに比べて3000キロと小さく、ストレスがたまりやすい。プレートが解放されたときに振動が伝わりやすい性質も持っているからです」

実際、この言葉を裏付けるように昨年9月には台湾でM6.9の地震が発生。橋や建物が倒壊する被害が出たが、そのわずか半月後に宮崎県で震度5弱の地震が起きている。幸い市民や建物に被害はなかったが、今後、フィリピン海プレート上で発生した地震がM8級の半割れ地震を誘発、時を待たずして巨大地震が襲い来る可能性も否めないのだ。

前出の科学ライターが続ける。

「怖いのは南海トラフを震源とした半割れ地震とその後起きる巨大地震に相模トラフ地震が連動してしまうことです。首都圏はいつ直下型地震が起きてもおかしくないといわれてきたが、1703年に起きた相模トラフを震源とする元禄関東地震は、4年後に宝永地震を誘発している。これと同じことが、短いスパンで起こらないとも限らないのです」

ちなみに、神奈川県の三浦半島では数年前から異臭騒ぎが続いているが、これが「岩盤の割れたときに発生する臭いに似ている」と指摘されている。もしも相模トラフの歪みとズレが原因であるなら、近い将来、西東の巨大地震、そして首都直下型地震が連動して起きる可能性もあるのだ。

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