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蝶野正洋『黒の履歴書』~2023年のプロレス界展望とは

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

明けましておめでとう。2022年はいろいろと騒がしかったけど、2023年も何が起こるか分からない波乱の1年になりそうだね。

それでも2023年の展望を語っていこうと思うんだけど、プロレス界で大きな話題となるのが確実なのは、武藤さんの引退だ。俺にとっては闘魂三銃士の盟友でもある武藤敬司が、2023年2月21日、プロレスリング・ノアの東京ドーム大会で最後の試合を行うことが決定している。

武藤さんはヒザだけでなく、いろいろとダメージを抱えていて、もはや満身創痍。でも、引退が近づくにつれてどんどん元気になっているように見えるから、ラストまでいい試合をしてくれると思っているよ。

俺が気になるのは、むしろ引退後。武藤さんが何をやっていくのかは分からないけど、まずは身体のオーバーホールに専念してほしいね。これまでの引退カウントダウンツアーで、たんまり稼いでるはずだから、そのカネでゆっくり休んで、治療や家族サービスに努める。それが尽きたら、長州さんと組んでタレント活動を本格化させるんじゃないかな。

逆に言えば、武藤さんが引退後、どのようにプロレス界に関わっていくのかは読めない。武藤さんはレスラーとしてのポジションにはこだわるタイプだと思うけど、誰かの上に立ちたいという人ではない。今までもさまざまな団体でトップをとって、全日本プロレスやWRESTLE-1では経営にも携わっていたけど、それが目的ではなかったと思うしね。今後はもうプロレスには触らなくなるのか、それとも「プロレスリング・マスターズ」のような興行をプロデュースしていくのか、どちらの可能性もあると思う。

プロレス界も“ABEMA”絶好調

武藤敬司の引退だけでなく、今年のプロレス界は大きな変化が起こりそうだ。すでに昨年末から、選手の移籍や脱退が相次いでいて、業界再編の動きが加速している。昨年は新日本プロレスと全日本プロレスが旗揚げ50周年だったこともあり、イベントや記念興行が相次いだ。そこで普段は交わらない選手同士の交流が生まれて、控室ではさまざまな情報交換もあったと思う。それが移籍話につながったんじゃないかな。

その裏にあるのは、やっぱりカネかもしれない。新日本プロレスは、いまテレビ朝日で『ワールドプロレスリング』という中継番組を持っている。新日本プロレスとテレビ朝日は昔からのパートナーだけど、そのテレビ朝日は、ネット動画配信の『ABEMA』と組んでいる。その流れで新日本プロレスの番組も配信しているんだけど、このあたりのパワーバランスが微妙になってきている。

テレビ業界は景気が悪く、苦しいという話をよく聞く。でも、ABEMAは絶好調。放映権料が200億円といわれたサッカー・ワールドカップの全試合を無料生中継して、さらに躍進を果たした。もはやABEMAが本気を出したらプロレス・格闘技界をまるごとコントロールできるくらいのスケールになってきている。

プロレスに限らずスポーツ中継を見るのにABEMAは優れている。CMも挟まないし最後まで完全放送。これからスポーツは、ネット配信動画で見るというスタイルが一般的になっていくのは間違いないと思うよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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