昨年12月16日に、与党は2023年度の税制改正大綱を取りまとめた。岸田文雄総理が打ち出した防衛費倍増のために必要となる1兆円の増税は、法人税とたばこ税、復興特別所得税で賄われることになった。私は当初、復興税は「切りしろ」で、法人税とたばこ税だけの増税を決めるだろうと考えていた。
理由は2つある。まず岸田総理自身が、「所得税の増税はしない」と明言していたことだ。いくら付加税の形式であっても、復興税は所得税の一部である。次の理由は、復興特別所得税の一部を防衛費に振り向けることは、与党議員からの批判が大きく、国民の理解も得られないからだ。
それでも岸田総理は、3税による増税を強行した。増税に反対してきた与党議員は、増税の時期を「2024年度以降の適切な時期」と曖昧にしたことで矛を収めたが、それは火種を残すことになる。
今後の展開のカギを握るのは、4月に行われる予定の統一地方選挙だ。ここで自民党が惨敗することになれば、増税路線の岸田総裁に不信感を強める安倍派が、総裁の交代に向けて動き出すだろう。
衆議院議員の数で見ると、主流派となっている岸田派(33人)、麻生派(38人)、茂木派(34人)の合計は105人となる。これに対して安倍派(60人)、二階派(34人)で合計94人だ。問題は、この2派閥に岸田総裁に代わる人材がいないことだ。
しかし、菅義偉前総裁を引っ張り出すことができれば、菅グループ(13人)と合わせて合計107人となり、主流派と十分に戦える人数がそろうことになる。
菅義偉前総裁の気になる動き…
現在、菅氏は総理総裁への再就任を否定している。しかし、二階俊博元幹事長が動いて「国難を救ってほしい」と頼めば、心変わりする可能性は十分あるだろう。そもそも菅氏が再就任を拒否しているのは、一生懸命努力したにもかかわらず、国民にほとんど評価されず、それも不満に思っているからだといわれる。
しかし、岸田総理のあまりの傍若無人ぶりに、多くの国民は菅氏のほうがずっとましだったと感じているはずだ。国民だけでなく与党議員も、岸田総理の暴走を許し続ければ、自らの地位が危うくなることを十分認識しているだろう。
2023年の世界経済は、大混乱に陥ることが確実視されている。不動産バブルの崩壊が始まっている中国では、ゼロコロナ政策の緩和によって、今後、いつ爆発的な感染拡大が起きてもおかしくはない。そして、アメリカやヨーロッパでは、物価抑制のための金融引き締めで、景気失速が確実視されている。その中で最も恐ろしいのが、バブル崩壊だ。すでにその兆候は、はっきりと表れている。
暗号資産全体の時価総額は、2022年の1年間で3分の1に減少しており、バブル崩壊の先導役とみられている。原油などの資源価格も、昨年6月前後のピークから比べると、軒並み3割前後の下落となっている。
不動産価格の下落は、すでにアメリカでも始まっており、昨年11月に経済協力開発機構(OECD)が発表した経済見通しでは、2023年の経済成長率はアメリカもユーロ圏も、わずか0.5%となっている。そんな環境のなかで、財政金融の同時引き締めを断行しようとする岸田政権が継続したら、日本は間違いなく恐慌に陥ってしまうだろう。
国政選挙がしばらくないなかで日本を救う方法は、自民党内の良識派がどれだけ動けるかにかかっている。彼らを動意づけるために国民ができることは、地方議員にはとばっちりだが、統一地方選挙で与党を惨敗させることしかないだろう。
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