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外国人投資家の“日本の不動産”買い占めが地方・観光地にも波及〜企業経済深層レポート

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中国人投資家による東京や京都の不動産の買い占めは、以前からメディアでも報じられてきた。ところが、ここにきてそれが欧米や東南アジアの投資家らにも波及。全国の主要都市、観光地で加速しているのだ。

不動産デベロッパーが、中国人の旺盛な日本の不動産購入事情――その象徴的な出来事をこう明かす。

「実は、中国最大のEC(ネット通販)企業『アリババグループ』の創業者だったジャック・マー氏が、現在、延床面積2000平方メートルを超える箱根(神奈川県)の豪邸で暮らしているのです。同氏は2019年に会長を退任したが、日本各地に複数の別荘を持っている。これらを起点に世界を飛び回っているのです」

マー氏が所有する箱根の別荘は、あの『ソフトバンクグループ』の孫正義会長から譲り受けたものらしいが、こうした日本のリゾート地購入例は、日増しに増えているという。

不動産業者が言う。

「マー氏に限らず世界の富裕層、投資会社は以前から〝日本買い〟を進めてきた。理由は豊富な水や自然、温泉、世界無形文化遺産に登録された和食、治安の良さなど、世界的にも稀な条件が揃っていたからです。ところが円安が進み、他国と比較して不動産に圧倒的な割安感が出てきた。これが海外からの投資を加速させているのです」

北海道の新幹線延伸のために

前出の不動産デベロッパーによれば、中国の上海や香港と比較すると都内のマンションは1平方メートル平均200万円程度安いという。ケースによっては、1部屋で数億円の価格差が出ることも少なくないというのだ。

「昨年、原宿駅近くに完成した超高級マンション『MARQ OMOTESANDO ONE(マーク表参道ワン)』は、1室平均が10億〜20億円、最高額が67億円で国内では過去最高額のマンションと話題になりました。とはいえ欧米をはじめ世界の国々では100億や200億円超えの物件もザラ。そのため畳400畳の広さで67億円は、海外富裕層に好環境&格安に映るはずと、香港系の投資ファンドがプロデュースしたのです」(同)

一方、海外資本による日本の不動産買い占めの動きは、地方都市や観光地でも活発化している。その代表格が、2030年に北海道新幹線が札幌まで延伸予定の北海道だ。別の不動産関係者がこう話す。

「工事は遅れ気味だが、道内の観光業界は新幹線の延伸に期待をかけている。延伸で東京―札幌間が約4時間半となり、搭乗時間を含めた飛行機の移動時間と大差なくなるからです。また、札幌は新幹線の延伸に合わせた冬季五輪の誘致に躍起。これが実現すれば経済は爆発的に活性化するはずで、ニセコ町では新駅候補地一帯を香港資本が買い占める現象も起きています」

林野庁によれば、2021年の外資による道内全体の森林買収面積は約47ヘクタール。取得者もアメリカやマカオ、香港やシンガポールと多岐にわたるが、似たような現象は岩手・安比高原でも起きている。観光業者が話す。

「ここでは世界最大級のホテルチェーン、イギリスの『インターコンチネンタルホテル』と『ANA』が提携し、昨年からすでに改装と新築合わせて3棟のホテルを開業しました。また、今年はイギリスの全寮制名門校『ハロウスクール』の日本校も開校し、安比全体に外資系進出の気配が高まっているのです」

新たにホテルが開業…

古都・京都には以前から中国資本が流入していたが、近年は不動産の買収がより顕著になっているという。

「昨年、米投資ファンド『ブラックストーン・ホールディングス』が、近鉄グループの『都ホテル京都八条』など8施設を600億円で取得。西武グループの『ザ・プリンス京都宝ケ池』も今年、苗場プリンスホテルやゴルフ場など30の施設とともにシンガポールの投資公社『GIC』に約1500億円で買収された。中国系以外も猛烈な動きを見せています」(地元の事情通)

2025年の万博開催と、30年をめどにしたカジノを含むIR(統合型リゾート)候補地で意気上がる大阪も、海外からの不動産投資が活発だ。金融業関係者は言う。

「昨年はミナミのグリコ看板の近くにある、大阪で最も地価の高いランドマークビルを、ドイツの『デカ銀行』系列の投資会社が買収。『デカ戎橋ビル』と命名した。また、大規模再開発が進む梅田駅周辺には、万博開催前に米ヒルトンが2棟のホテルを新たに開業する予定です」

九州・長崎ではコロナ禍による経営悪化で、旅行会社『HIS』所有のリゾート施設『ハウステンボス』が香港の投資会社に約900億円で売却された。

さらに沖縄の無人島、具志川島にはモルディブなどで高級リゾートを展開する『ソネバ』が富裕層向けのリゾート開発に乗り出す構えを見せている。前出の不動産デベロッパーが語る。

「円安が引き金となり、海外投資家たちの日本への不動産投資欲は高まるばかり。その顕著な例が、米投資銀行『ゴールドマンサックス』の日本投資額で、数年前は1600億円前後だったものが昨年は2700億、今年は上半期だけで1800億にも上っているのです」

今や日本全国には利益を見込んだ〝令和の黒船〟が多数押し寄せている状況。それが日本にとってもプラスになればいいのだが…。

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