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北朝鮮『後継者問題の闇』!? 金正恩“娘”のお披露目で暴かれる「金一族の黒歴史」

Alexander Khitrov
(画像)Alexander Khitrov/Shutterstock

11月19日、世界に衝撃が走った。この日、北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、18日に行われた新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星17型』とみられる発射実験の模様を放送したのだが、驚いたのはミサイル打ち上げを「現地指導」した金正恩総書記が、女児と手をつないでいるシーンが映し出されたことだ。

女児は高級そうな装いで、長い髪をポニーテールにしており、その容姿は正恩氏にそっくりだった。11月22日、韓国における大統領直属の諜報機関、国家情報院(NIS)は、女児が正恩氏の第2子、キム・ジュエ(金主愛)さんである可能性が高いと国会に報告した。

「漢字表記が主愛でよいかどうかは、まだ未確定です。正恩氏も最初は正銀、そして正雲、最後に正恩で確定したからです」(北朝鮮ウオッチャー)

それはさておき、さらなる驚きは11月27日、朝鮮中央通信が二度目に姿を現したジュエさんを「尊貴な子弟様」と伝えたことだ。

「北朝鮮メディアが公式報道で尊敬語を使うのは、最高指導者とその一族だけ。どうやら正恩氏の家族をロイヤルファミリーとして、日本の皇室や英国王室と肩を並べるものにしたいようです。そもそも北朝鮮の駅や公共施設、各家庭に飾られている金日成主席と金正日総書記の肖像画は、戦前に御真影を掲げていた日本を真似たものですからね」(北朝鮮ウオッチャー)

次も愛人の子が継ぐ!?

正恩氏には2010年、13年、17年に生まれた3人の子供がいるとされる。10年生まれの第1子は男子とみられており、儒教国家の北朝鮮では「長子相続」のはずだ。では、なぜお披露目が第1子ではなかったのか。北朝鮮の宣伝スタイルは仰々しいことで知られているが、その裏には大きな闇が隠されている。

「ジュエさんは、本命の後継者を徹底的に隠すための人身御供かもしれませんし、あえて早期に公表することで掌中の珠とし、帝王学を学ばせるつもりかもしれません。いずれにしても北朝鮮は、世代を超えて核国家となる意思をはっきりと示しました」(同)

10代前半と推測される第1子については、NISの必死の情報収集にもかかわらず、平壌でその存在が確認されたことは一度もない。それどころか、いまだ名前さえ分かっていないのだ。

「実は『ジュソン』という女児が正恩氏の第1子で、李雪主夫人ではなく、別の女性との間にできた子供だという未確認情報もあるのです」(外交関係者)

ならば、ジュエさんを公開したことが理解できる。そしてさらなる闇は、雪主夫人が正恩氏の母である高容姫の再来を恐れており、是が非でもわが子を後継者にしたいという願いを持っていることだ。

「正恩氏は2013年にナンバー2だった叔父の張成沢を国家反逆罪で粛清しましたが、その真の理由は、雪主夫人が張の愛人だったことを知ってしまったからです。以来、夫婦仲は冷え込んでいます」(韓国の雑誌記者)

日本からの帰国者である容姫氏は、北朝鮮における成分(身分)が低い。そのため、日成氏の長男である正日氏の寵愛だけが頼みの綱で、自分の子供の誰かを後継者にすることだけが生き残る術だった。

「夫婦仲に亀裂が入っている状態なら、正妻の雪主夫人には正恩氏の例と同じく、愛人の子供が後継者になるという不安がつきまとう。今のうちに後継者を決めたいと思うのが、普通ではないでしょうか」(同)

真の白頭山血統を消した…

そもそも北朝鮮には、旧日本陸軍中野学校の残置諜者(諜報員)の畑中理(北朝鮮名=金策)が、敗戦時に北朝鮮を第2の日本とするため、金一族(白頭山血統)を皇室に見立てて作り上げた国だという説がある。

「金策は日成氏の右腕とされ、死後は『共和国英雄』として功績をたたえられています。出身地に近い城津市は、1953年に金策市に改名され、空軍の教育機関は金策航空大学と命名されている。そして極め付きの闇は、金策が日成氏の妻であった金正淑氏との間にもうけた子供が、正日氏だというのです」(歴史研究家)

真の白頭山血統は、日成氏、正日氏、金正男氏、金漢率氏であり、正恩氏はその「枝」にすぎない。だから幹である正男氏を暗殺する必要があった。

「正当性とカリスマ性に欠ける正恩氏は、髪型や体型、しぐさ、しゃべり方まで日成氏を模倣しなければならなかった。神がかり的な演出が通用しなくなった現在、金策が設計した『疑似天皇制』を踏襲する以外、自分をロイヤルファミリーの長とする道はありません」(同)

高級そうなダウンジャケットやコートを着て、テレビに映し出されたジュエさんを見て、明日の生活に追われる北朝鮮の人々はどう思うのだろうか。

「自分たちのなけなしの財産を吸い上げた結果、あのように丸々と太ったと誰もが思うでしょうね」(前出・北朝鮮ウオッチャー)

パクリと偽造で塗り固められた金一族の黒歴史は、果たしていつまで続くのだろうか。

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