10月末のシーズン最終盤に渓流釣りを楽しんだ前回。1尾で十分満足となるアマゴに納得しての帰り道。山を下りて河口へと到着すると、海に面した岸壁は相変わらず釣り人で賑わっております。
今回は渓流釣りが目的でしたので、潮汐表は全くのノーチェックでしたが、見れば満潮近くを迎えた高い水面はユラユラと揺らめき、なんともよい雰囲気です。
つい先ほど、納得の1尾を仕留めて〝会心の釣り〟をしたハズなのに、再びムラムラと沸き起こる釣り欲。いうなれば、お気に入りの女優さんで〝会心のヌキ〟をした後に、何気なく見ていたサンプル画像に出てきた、また違ったタイプの女優さんにムラムラとなるあの感覚、と言えば分かり易いでしょうか。日没まではまだ少々時間もあることですし、もう一発ヌイて、いや、釣っていくことにしましょう。とはいえ、目の前の岸壁はすでに釣り人たちで賑わっていますので、海沿いに歩いてみることにします。
しばらく歩いて、重須の岸壁に来てみると先客は1名。内浦湾の一番奥、さらに弁天島の裏手になる重須は、一見すると冴えない雰囲気に見えるせいか、いつも静かにのんびり竿が出せるうえに、意外と面白い釣りができるポイントです。まあ、日没までの遊びにはちょうどよいかと、先ほど渓流で使っていた竿に簡単な玉ウキ仕掛けをセット。エサは、こんなこともあろうかと、念のために持参したアミエビが1パックのみです。数尾をパラリと撒いてから1尾をハリに付けて仕掛けを入れます。
寄せエサだけを食うタカベ
静かな湾内の澄んだ海ですから、ウキを見るよりもエサを見た方が早く、ゆっくりと沈んでいくエサを目で追ううちに、中層で何かに食われて見えなくなりました。竿を煽ると、小気味よい手応えで釣れたのは小さなベラです。
小ベラとはいえ、渓流竿で釣ればそれなりに面白く、小ベラと戯れるうちに寄せエサの匂いを嗅ぎ付けた、クロホシイシモチの群れが寄ってきました。今度はクロホシイシモチの入れ食いです。静かな湾内の岸壁でのどかに雑魚釣りもいいもんだ、とオキアミをパラリと撒きながらのんびり楽しむうちに、背中から尻尾にかけて鮮やかな黄色をした小魚の群れが寄ってきました。タカベです。
「むむっ! タカベや。こうなったらのんびりはしておれんな…」
タカベを釣るべくオキアミをパラリと撒いて、その中にハリに付けたエサを入れますが、寄せエサは食うくせに、付けエサには見向きもしません。やはり一筋縄ではいかないようです。道具箱を漁り、手持ちで一番小さな袖針3号にチェンジし、丁寧にエサを付けて再びトライです。寄せエサに群がるタカベ…と、1尾のタカベが付けエサをくわえました。反射的に手首を返すとキューンッと心地よい手応えで一丁上がり。よしっ! これで数釣れるわい、と安心したのも束の間、再び、付けエサには見向きもせず、寄せエサだけを食うタカベたち。時には付けエサの目の前まで来るのですが、直前で見切ります。こうなるとこちらもアツくなってしまうもので、気が付けば夕暮れ時。少しずつ暗くなってまいりました。
せめてあと1尾…
薄暗くなるにつれタカベの活性も上がり、どうにかこうにか、だましだまし食わせて2尾を追釣。小物とはいえ何とか食わせたときの快感はクセになります。せめてあと1尾、と夢中で海面を覗き込みながら釣りますが、秋の日没は早く、いよいよエサも見づらくなってきました。そこで、タナを少し下げてウキに頼ることにします。丁寧にエサを付けて仕掛けを入れ、玉ウキを眺めていると勢いよく沈む玉ウキ。竿を煽ると鋭い引きに「よっしゃっ、タカベや」と喜んだものの、釣れたのはアジ。この手の釣りでは本命のアジですが、タカベが釣りたかった…。そうこうするうちに日もとっぷりと暮れ、ついには玉ウキも見えなくなり、こうなるとさすがに諦めて帰路に就きます。
タカベ、アジといえば塩焼きが定番。アジが旨いのは言うまでもなく、タカベも夏に漁獲される、脂ノリノリの大型と比べれば脂乗りこそ薄いものの、美味で知られる魚だけに、ホクホクの肉質は上品で旨味がしっかりしております。
渓流釣りのついでに、ちょっとムラムラがきっかけの小物釣り。とはいえ、やってみればついつい夢中になってしまうほど、楽しい時間を過ごすことができました。いやぁ、釣りって本当にいいものですね。
三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。
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