〝死ぬまで働け〟。これでは、どこかのブラック企業と同じではないか。
政府は国民年金(基礎年金)の保険料納付期間を現行制度の40年間から45年間に延長する検討に入った。これが現実化すれば、対象者はプラス約100万円もの支払い増になるため、「年金改悪」の声が噴出している。
具体的には、どんな年金改革なのか。社会保険労務士が解説する。
「自営業者や農業従事者、フリーランスの人たちが加入する国民年金は、20歳から59歳まで40年間支払えば、60歳から年金が受け取れるのが現行の仕組みです。これを5年延長し、64歳までの45年間とする方向で社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)が議論に着手。政府は2024年までに結論を出し、25年の国会で法案成立を目指すというもの」
国民年金の保険料は毎月1万6590円で年間約20万円。5年間納付期限が延長となれば、単純計算で約100万円の負担増となる。
「納付期間が延びても、年金が増えればいいが、増えるどころか場合によっては減額もありうる。というのも、納付期間延長は高齢化社会に加え、年金を支える現役世代が減るため財源不足になるのは自明の理で、その財源不足の穴埋め策だから、ほとんど増えることはない。そのため対象者の間からは〝100万円を自分で貯金や投資に回した方がまだマシでは〟といった不満が出ているのです」(同)
老後の生計ままならず…
国民年金を40年間納付した場合の受給額は、月約6万5000円。しかし、年金支給額は物価や賃金の伸びに合わせて改定される『マクロ経済スライド』を導入しているため、支払った保険料に対する受給額は実質目減りしていく公算が大きい。
「60歳以降は、ほとんどの自営業者も高齢で収入が少なくなるタイミング。また、60歳定年で働かない人だっている。ここに新たに100万円負担となると、老後の生計を直撃する」(同)
なぜ、政府はここにきて保険料納付期限延長を検討し始めたのか。
「この案は4〜5年前から燻っていた。しかし、実質の支払いが増える年金話は国民が敏感に反応を示す。選挙に直結するから、どの政権も手をつけたくなかったのが本音。岸田政権は、昨年の衆院選と今年の参院選で大勝した。そして、2025年夏の参院選まで政権を左右する国政選挙がない『黄金の3年間』を手にした。そのため、保険料納付期間延長案が一気に動き出したのです」(野党国会議員)
現在、岸田政権は旧統一教会問題、円安・物価高で支持率がダダ下がり。さらに、100万円負担増の〝年金改悪〟問題が加われば、致命傷となりかねない。
日本の老後の行き着く先は〝死ぬまで働け〟なのか。
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