塩野義製薬は10月11日、開発中の新型コロナウイルスの飲み薬『ゾコーバ』について、最終段階の臨床試験(治験)のうち、発症者の同居家族を対象にした予防効果を確かめる試験を、12月から始めることを発表した。これで日本初のコロナ治療薬誕生への期待が、さらに高まっている。
「2月、塩野義製薬は厚生労働省に『ゾコーバ』の製造、販売の承認申請をしていた。ゾコーバはウイルスの増殖を妨げる作用があるとして、軽症や中等症の患者への使用が想定されている。審査を迅速に進める条件付き早期承認制度の適用を求めていた」(厚労省関係者)
ゾコーバは、米メルク社製飲み薬『モルヌピラビル』より小さく、高齢者でも飲みやすい特徴がある。塩野義製薬はゾコーバを感染初期に1日1回、5日間服用する臨床試験を進めてきた。
「治験では改善効果が認められたんですが、副作用は報告されていなかった。しかし、妊娠したウサギに治療で使うよりも濃度が高い薬を投与したところ、胎児の骨格に異常を及ぼす〝催奇形性〟が確認されたため、妊婦への使用は推奨しないことになったのです」(都内の感染症専門医)
体内のウイルス量が減少する
専門家からも「データ不足」の声も上がっていたことから、6月と7月に開かれた厚労省の専門部会で承認が見送られ、継続審議となっていた。
「二度も承認が見送られたことで、感染症専門医から〝症状が有意に改善しなくても、体内のウイルス量が減少すれば家庭内感染などの抑制に役立つ〟とする声が上がっていた。つまり、厚労省に対する〝危機克服意思の欠如〟の指摘が強まっていた」(医療ライター)
感染症専門医らの批判を背にした飲み薬のゾコーバ。12月からの治験では、日本やアメリカなど2040人を対象に2023年9月まで症例を集める予定だ。
10月20日の参院予算員会で、加藤勝信厚労相はゾコーバについて「国産治療薬への期待は大変高いと認識しており、緊急承認も念頭に速やかな審査を進めていきたい」と語っている。
国産初のコロナ治療薬は、もうすぐだ。
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