塩分の過剰摂取は高血圧、脳梗塞、心筋梗塞を引き起こす原因にもなりかねないため、日本の減塩・無塩食品市場は拡大の一途だ。
「2015年から2020年の5年間で、市場は約26%も成長した。ただ、病院食のような味気ないものより、しっかり味のするものを食べたい人が多い。生きていれば当然のことです」(サイエンスライター)
健康志向が高まる中、キリンホールディングスと明治大学が共同開発した食器『エレキソルト』は画期的だ。これは、電気の力で塩味を1.5倍強く感じるスプーンやお椀のこと。内蔵のバッテリーにより通電しながら食事を摂取することで、塩味や旨味が増すように感じられるという。
「食品に含まれる塩味の元になっているナトリウムイオンの動きを、出力する電流によってコントロールする。それによって、舌で感じられる塩味・旨味が強調される。日本人が1日当たりに摂取する塩分量の目安は男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満。それなのに20歳以上の男性で10.9グラム、女性で9.3グラムと、WHO(世界保健機関)が推奨する5グラム未満の2倍。世界的に見ても非常に高い。日本の食文化では、意識せず食塩を摂りすぎてしまう傾向にある」(同)
疾患でも自覚症状が現れにくい…
生活習慣病を抱える人は、塩分量に細心の注意を払いながら食事しなければならない。
「注意しないといけないのは、心筋梗塞や脳梗塞だけではありません。高齢の日本人は10人中7〜8人は腎臓疾患を持っていることがあるんですよ。自覚症状が現れにくいので気が付かないだけなんですが、これも塩分の過剰摂取と関係があります」
と語るのは、山梨大学医学部名誉教授の田村康二氏。
「塩分カットは味気なく不味い…そういうイメージは工夫によって変えられるものです。食材の元の味がよければ塩分を多くする必要はない。また、中国の故事では戦国時代の斉国に無塩女という醜女がいたが、国の危急を救って斉国の妃になった。無塩というのは高齢者にとって、それくらい重要なことなのです」(同)
健康長寿のキーワードは塩分と〝無縁〟ではない。
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