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「つくばみらい市」地価上昇率トップに!〜企業経済深層レポート

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地価がジワリと上昇している。上昇は東京だけでなく、神奈川、埼玉、千葉、茨城の4県、いわゆる「東京圏」にも広がる。中でも「東京圏」住宅地の上昇率トップ3は、すべて茨城県南部の市街地である。

茨城といえば「都心から遠い」イメージがあるが、どういうことなのか。全国の地価に何が起きているのかを探った。

まずは全国的な地価の状況を、不動産鑑定士が解説する。

「国土交通省による最新の『都道府県地価調査』(令和4年7月1日時点)概要が9月に公表されました。これによれば、地価の全国全用途平均は去年に比べて0.3%上昇で3年ぶりのプラス。特に住宅地の全国平均は昨年に比べ、0.1%上昇しました。上昇に転じたのは日本中がバブル景気に踊った1991年以来、実に31年ぶりというから驚きです」

そして上昇の背景についてこう解説する。

「やはり低金利です。資金調達が容易になり、投資家などが都市部や今後値上がりしそうな地点を購入しています。また円安の影響で、外国人が続々と日本の良い土地や建物を物色中。コロナ禍で落ち込んだ土地の需要が、全国的に回復傾向にあることも大きい」(同)

結果、東京都心の新築マンション価格は高騰している。不動産経済研究所(東京)によれば、2021年度の1戸(約68平方メートル)当たり平均価格は1991年バブル期を超え、8449万円と過去最高を記録した。今年に入ってもこの勢いは止まらず、22年3月時の同研究所の調査によれば、東京23区内では前年同月比30.3%増の9685万円となっている。

都心部高騰はまだまだ続く

建築関係者が言う。

「新築マンションの高騰は、慢性的な人手不足による建設費の上昇と、エネルギー価格の上昇による資材全般のコスト高が原因です。高騰はまだまだ続く」

都心部の住宅地地価が上昇する中、周辺地域への影響も著しいという。不動産関係者が指摘する。

「最新の『都道府県地価調査』によれば、東京圏の住宅地の上昇率上位3地点はいずれも茨城県つくばみらい市で、対前年比で最大10.8%のアップです」

つくばみらい市は茨城県の南部、研究学園都市「つくば市」と隣接する都市で、人口は約5万人。

「この地域には秋葉原や浅草と直結する、つくばエクスプレス(TX)が2005年に開業し、都市開発でいずれは伸びると見られていました。『都心まで40分』は千葉ニュータウンや埼玉県所沢市とほぼ同じ。ですが、埼玉や千葉と比べて遠いイメージが強く、さほど伸びませんでした」(同)

ところが都心の新築マンション高騰で、改めて注目されたのだという。

「敷地は広く、緑も豊か。都心よりも安いため、この地域への移住が活発化し、地価のアップにつながっています」(同)

実際に都心のマンションから引っ越した30代のサラリーマンが語る。

「小学生の子供が2人いて、テレワークが増えると、都内の3DKでは手狭になりました。子供の進学や、たまの通勤、資金繰りを考えると、都心から40分の地で3000万円台の戸建てはベストです」

教育環境としても、東京や埼玉に近い上、つくばにも多くの進学校があるのが魅力的だ。

テレワーク普及も空き家増加傾向

つくばみらい市には、彼のような20〜40代の若い世代を中心に、8月末までの1年間に約2800人が新たに転入している。不動産関係者が言う。

「最寄りのTXみらい平駅から徒歩5分ほど、大手ハウスメーカーの4DK戸建て分譲で5000万円前後…と、最近はこの辺りも価格は上昇傾向にあります。同じつくばみらい市でも、車で15分ほどの地域なら、まだ3000万円台前後で購入できます。それでも最新の地価調査で『10%アップ』と示されたように、戸建て価格は昨年より上がっています。都心部と比較するとまだ割安感があるため、今後も若い人たちが流入する可能性が高い」

土地価格の高騰は大都市のみならず、周辺にも波及し、その範囲が広がりつつある。北海道札幌市の地価が上昇し、隣接する北広島市はプロ野球・日本ハムの球場新設の影響もあり、日本一の高騰率となっている。

一方で全国の土地価格に新たな動きもある。先の不動産関係者が言う。

「都心部や大都市から離れた地域では空き家が急増しています。そうした家はリフォーム物件でも数百万円から1000万円台で購入できることが多い。若者が都会に出て、その親が高齢で亡くなると、空き家となる家が続出。売りに出してもなかなか売れず、ダンピングが起きています」

総務省調査によれば、18年の全国の空き家は約849万戸に上る。野村総研は、2028年には空き家数がほぼ倍の1600万戸に膨れると推計する。

「コロナ禍を機にテレワークが普及し、北海道や沖縄でも仕事ができるようになりました。工夫次第では安い空き家を上手にリフォームして生涯負担を減らすことも可能です」(同)

全国的に土地価格が上がる中、住宅確保の在り方を改めて見直すチャンスになっている。

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