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コロナ終焉のWHOと日本とのズレ~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎
森永卓郎 (C)週刊実話Web

WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が9月14日、新型コロナウイルス感染について、「まだ到達していないが、終焉が視野に入っている」と会見で語った。前週の新型コロナ感染症による死者数が、2020年3月以降で最低となったことが根拠だという。

しかし、日本のコロナ感染者数を見ると、コロナが第7波で終息するという話は、にわかには信じ難い。日本の感染者数は、新しい波が来るたびに大きくなっているからだ。ちなみに感染第6波の感染者数は743万人だったが、感染第7波は9月19日現在で1159万人と、第6波を大幅に上回っている。死亡者数も1万2800人と、第6波を超えた。第7波の大きさは、すでに過去最大に達しているのだ。

通常のパターンで考えると、感染が終息するときは、波動を繰り返しながら波の大きさが小さくなっていく。ところが、日本の場合は、まだ波が大きくなり続けているのだから、終息が視野に入ったとはとても言えないのだ。これから冬に向かうと、行動制限緩和や入国規制緩和の影響もあり、さらに感染が拡大しやすくなってくる。

それでも感染終息を期待する見方が一部にあるのは、巨大な第7波そのものが理由になっている。これまでの日本では、マスク着用や行動制限によって、感染抑制にある程度成功してきた。そのことが、体力の弱い高齢者や基礎疾患を持つ人の命を守ってきたとも言える。

第8波に対応する準備は!?

しかし、第7波では重症化率が下がったにもかかわらず、日本では感染の爆発的拡大によって、抵抗力の弱い人たちが次々に命を落とした。欧米ではこれまでの感染拡大で、抵抗力の弱い人たちがすでに亡くなっており、今回の感染拡大ではそれほど大きな被害が出なかった。

つまり、第7波で世界一の感染者数と死亡者数を生み出した日本は、今回の感染拡大で欧米並みに「強い人」だけが生き残った。だから、今後に第8波が来ても、さほど大きな被害を受けることはないだろうという見立てだ。

私は、この見立ては正しいかもしれないと思っている。もちろん経済と引き換えに、これまで守ってきた弱い人の命を差し出した岸田政権の政策が正しかったかどうかは、今後に十分な検証が必要になってくるだろう。

ただ、心配なことが1つある。東京大学医科学研究所の佐藤佳教授らの研究グループが、「ケンタウロス」と呼ばれるBA2.75にはBA5に感染してできた免疫が効きにくいとする動物実験の結果を発表しているのだ。ケンタウロス株は、すでに全国各地で確認されており、今後、第8波の主流になるとみられている。

ということは、日本が今回の感染第7波で集団免疫を達成したとしても、その免疫効果はほとんど意味を持たないことになる。政府もそのことは分かっているようで、オミクロン株対応ワクチンを年末までに希望者全員に接種したいとしている。ただ、問題は優先順位だ。

政府は、高齢者と基礎疾患のある人を優先すると言っているが、例えば4回目を8月に打った高齢者は、年内にオミクロン株対応ワクチンを打てない。政府が5カ月の接種間隔を求めているからだ。ただ、海外では2カ月から3カ月の間隔でも接種をしている。接種間隔を短縮しないと、また悲劇が起きるだろう。

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