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利権と賄賂の東京五輪~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎
森永卓郎 (C)週刊実話Web

8月17日、東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、組織委員会元理事の高橋治之容疑者が逮捕された。大会スポンサーだった紳士服大手『AOKIホールディングス』から計5100万円の賄賂を受け取り、便宜を図った受託収賄の容疑がかけられている。

高橋容疑者は、もらっていたのはスポーツビジネス全般に関するコンサルティング料であり、五輪事業は契約に含まれていないとしている。だが、コンサルティング契約が結ばれたのは2017年9月で、高橋容疑者が代表取締役を務める会社とAOKIがスポンサー契約に合意したのは、それに先立つ同年1月だった。

さらに、組織委員会とAOKIがオフィシャルスポンサーとして正式契約したのは翌2018年10月だ。コンサルティング料は月額100万円だったが、東京五輪終了の翌月、21年10月から半額の50万円に減り、22年3月に契約終了となっている。五輪とは無関係という主張は、あまりに無理がある。

また、もっと大きな疑惑は、AOKIが5億円のスポンサー料を支払う前の17年6月、電通の子会社に2億5000万円を支払っていることだ。そのうち同社が2000万円を受け取り、馬術連盟と日本セーリング連盟への寄付などで8000万円が使われ、高橋容疑者には1億5000万円が渡ったとされる。この金を高橋容疑者は、借金返済と経営するステーキ店の赤字補填に使ったという。

汚職にまみれた祭典に…

全体の構図は、おそらくこうだろう。15億円といわれるスポンサー料をAOKIに対して半額に減免する際、高橋容疑者が正規の組織委員会への支払いを5億円にとどめ、残りの2億5000万円を先払いさせた。建前は、競技団体への寄付としており、実際に一部を寄付したが、大部分は電通の子会社と高橋容疑者が着服したことになる。そうだとしたら電通も共犯だ。高橋容疑者に関しては、東京五輪延期に伴ってAOKIが負担する追加スポンサー料について、1億円から1000万円に大幅減額した疑惑も持ち上がっている。

そもそも東京五輪の選定にも賄賂が絡んでいる。東京五輪招致委員会は13年、アフリカ系委員の票を取りまとめるため、国際オリンピック委員会(IOC)のラミン・ディアク元委員の子息が関与した『ブラック・タイディングス社』の口座に、コンサルタント料として2億3000万円を送金したことが明らかになっている。同時期、高橋容疑者はロビー活動費として8億9000万円を受け取っており、この資金を使ってディアク氏に500万円の腕時計を手土産として渡すなどしている。しかし、9億円近い資金がどのように使われたのか、詳細は明らかになっていない、もしかするとAOKIの事件と同様に、高橋容疑者の着服があったのかもしれない。

思い出すのは昨年2月、組織委員会の森喜朗会長の後任に内定していた川淵三郎氏が、突如として辞退に追い込まれたことだ。川淵氏が「無観客なら東京でやる意味がない」と発言したことが原因とみられる。国民にとって意味がなくても、利権を持つ人には、新型コロナの感染爆発を招いてでもやる意味がある。東京五輪の1年延期を最初に打ち出したのも高橋容疑者で、どう考えても東京五輪は利権と賄賂の祭典だった。そのことが明らかになっても、札幌市は五輪の再招致に向かっていくのだろうか。

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