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人気沸騰の“変わり種自販機”〜企業経済深層レポート

企業経済深層レポート
企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

自販機といえば相場は飲料水だが、最近はさまざまな食品を販売する「変わり種自販機」も登場、その人気がジワジワ高まっている。

例えば世界の三大珍味といわれる「キャビア」も自販機で販売されているというから驚きだ。自販機の人気がなぜ高まっているのか。そして令和の「変わり種自販機」には果たしてどんなものがあるのか。一挙公開しよう。

キャビア自販機について、飲料メーカー関係者が言う。

「都内の品川区中延駅のすぐそば、10台近くの自販機がズラリと並ぶコーナーの一角にキャビア自販機が登場したのが昨年暮れ。投入金額に応じた量のキャビアがゲットできるのですが、今はやりのガチャ方式で、一定の金額を入れて『当たり』が出ると、金額以上の量の大当たりキャビアがもらえる仕組みです。テレビでも次々と紹介され、遠方からも客が駆けつけているようです」

ブームを仕掛けたのは、中国にチョウザメの大養殖場を持つエストリア(東京)。同様のキャビア自販機は都内の新宿歌舞伎町のボウリング場にも設置され、人気を集めているという。

なぜ「変わり種自販機」の人気が高まっているのか。フードアナリストが、その背景をこう解説する。

「1番の理由はコロナ禍です。自販機は人との接触がほぼなく、感染の恐れの少ない点が見直されたのです」

コロナ禍で旅行もままならない中、地方独自の味やオリジナル飲食物を販売する自販機が増えたのも人気の秘密だという。

「手元に届くまでに時間のかかる通販と比べて、欲しい時にすぐに手に入るのが自販機です。その上、送料もかかりません」(同)

“機内食”が飛行機に乗らず食べられる

特に見逃せないのは、自販機の性能がアップした点だという。

「従来型の冷凍食品の自販機は商品を収容するストッカーが小さく、食品メーカーは自販機のサイズに合わせた専用の商品を作るしかありませんでした。これが改良され、スーパーに並ぶ商品も自販機用の商品も同じ製造工程で作れるようになりました。大型商品をそっくりそのまま自販機に入れられるようになったのです」(同)

大半の商品を冷凍販売できるようになったのも「変わり種自販機」活況化の秘密なのだ。

他にはどんな「変わり種自販機」があるのか。注目はラーメンを自動調理・自動販売する米国発の自販機「Yo-Kai」だという。ラーメン業界関係者が話す。

「羽田空港第2ターミナルなどに設置されたラーメン自販機Yo-Kai Express(ヨーカイエクスプレス)が話題になっています。というのも利用者が注文後、たった1分半でアツアツのオリジナルラーメンが食べられます。しかも価格は普通のラーメンとほぼ同じで、1杯790円(税込)。早くてうまいと人気なのです。今後は一風堂とも提携し、新たに2種類の豚骨ラーメンが提供される予定で、既存のラーメン店も『今後どこまで進化するのか』と戦々恐々です」

同じ羽田空港では、ターミナルを運営する日本空港ビルデング(東京)が世界各国の機内食を自販機で提供し、人気を博しているという。空港関係者が語る。

「日本空港ビルデングは通販サイトで世界の機内食を販売し、好評でした。その中から特に人気の高かった5種類のメニューを自販機向けにし、保冷剤・保冷バッグ付きで980円で提供。6月から販売を始めたところ、これが大当たりして補充が間に合わないほどの売れ行きだそうです」

ちなみに販売されているのは、鶏肉と赤ワインを使用したフランスの家庭的な煮込み料理「コック・オー・ヴァン」、スペインのシーフード料理「パエリア」、チキンのうまさと辛さが人気のタイ料理「ガパオライス」などだ。

非接触でいつもの味が購入できる

一方、東北自動車道・大谷パーキングエリア(PA)下り線に7月から登場したのは、セブンイレブンの商品が24時間購入できる「セブン自販機」だ。PA飲食店関係者が言う。

「運送業など深夜の高速道路利用者にとって、売店営業時間外の食料調達はちょっとした悩みの1つ。この自販機のおかげで、おにぎりやパンなどコンビニ店舗と同じ商品が24時間提供できるようになり、便利だと評判です。今後各地で一気に増える可能性が高い」

他方、東京都葛飾区の老舗「うなぎ魚政」の店舗前には、ウナギの蒲焼きを販売する自動販売機が設置され人気だ。フードアナリストが言う。

「1979年創業の同店はウナギの名店で、味にも定評があります。しかし注文を受けてからウナギをさばく調理法のため、最低でも40〜50分はかかってしまい、混雑時のテイクアウトはほぼ不可能に近い状況でした。この混雑解消に一役買ったのが自販機です。24時間稼働のため、混雑時でも定休日でもすぐに購入できると大好評です」

誰も彼もが忙しく、時短が推奨される昨今、日本人の食卓にも自販機の食品が少しずつ浸透していくのかもしれない。

事によると大ヒット商品さえ狙える自販機ビジネス。メーカーでも新メニュー開発には、おのずと力が入る。次なる「変わり種自販機」には何が飛び出すのか。

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