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『こち亀』 両さんも時代の変化には逆らえず…哀しき“封印漫画”の世界

『こちら葛飾区亀有公園前派出所』1976―2016 秋本治/集英社

コミックス200巻で完結し、惜しまれながら40年の歴史に終止符を打った『こち亀』。類のない長寿作品だけに、その絵柄もさることながら、過去のキャラ設定やエピソードのほとんどが更新されている。

登場人物がいつの間にか年を取らなくなり、主人公・両さんも拳銃をバンバン撃つとんでもないバイオレンス警官から、まるで別人に変貌。同僚の中川圭一ですら「拳銃が自由に撃てるから警官になった」と語っていたほどのアナーキー野郎だったが、警視庁のイメージアップとしても使われる作品となった以上、職権乱用を繰り返していては国民的漫画失格なのである。昔のように大原部長も「射殺しろっ!」とは安易に言えないのだ。

いつの間にか削除されたコミックス第4巻収録作

長い連載のため、コミックスではセリフや表現が描き改められた箇所も多いが、かつてコミックス第4巻に収録されていた『派出所自慢の巻』は、いつの間にか削除されている。

登場する水元公園前派出所(別名:国境警備隊)は、92式重機関銃や38式歩兵銃、手榴弾、擲弾筒、戦車などで武装した旧帝国陸軍かぶれの国粋派出所。両さんと中川は暖を取るため、「天皇陛下バンザーイ」と言いながら所内に飾られていた小銃などを火にくべ、はては公園から桜の木を引っこ抜いて所内で酒盛りに興じるというお話だった。

両さんの魅力がたっぷりの回だったのだが…。

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