『♯真相をお話しします』新潮社 /1705円
結城真一郎(ゆうき・しんいちろう)
1991年、神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業。2018年、『名もなき星の哀歌』で第5回新潮ミステリー大賞を受賞し、デビュー。2021年に「#拡散希望」で第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。長編作品『救国ゲーム』が第22回本格ミステリ大賞の候補作に選出される。
――ミステリー作家になろうとしたきっかけは何だったのでしょうか?
結城 中学3年の時、卒業文集に原稿用紙600枚換算にも及ぶ『バトル・ロワイアル』のパロディ小説を寄せたのがきっかけです。しかも、なんとこれが大ウケ。同級生のみならず、保護者の間でも「○○くんが仲間をかばうシーンがカッコよすぎる!」「うちの子が死ぬシーンの情けなさたるや…」と話題をかっさらいました。その後、大学の同級生である辻堂ゆめさんが『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞を獲得。その時「やられた!」と目の前が真っ暗になり、「俺も絶対デビューしてやる」と尻に火がつきました。
――マッチングアプリなど現代的なテーマを織り交ぜたミステリーになっています。取り入れてみようと思ったのはなぜですか?
結城 一番の理由は、「新たなミステリーの可能性を開拓したい」という思いからです。偉大なる先人たちは現代的なテーマは「物理的に」書けません。ちょっとずるいですが、後の時代に生きる者のある種の特権をフル活用した感じです。もう1つの理由は、身近なテーマを主軸に据えることで、より多くの人が手に取りやすいミステリーを目指したい、という思いからです。でも結局は「より多くの人に楽しんでもらいたい」というのが一番の動機になるかもしれませんね。
ネタは日々の中での妄想や空想から
――ミステリーのネタを考える時に参考にしているものはありますか?
結城 日々暮らしている中でふと妄想したこと、引っかかったことなどを題材にすることが多い気がします。本作に関しては、自身の「実体験」が基になっていますね。日々、何かと空想・妄想を膨らませつつ、広くアンテナを張り、何か面白いものを見つけてやろうとたくらんでいる――というのが、自分の創作手法であり、ネタの作り方と言えるかもしれません。
――現代をテーマにしたミステリーの可能性を示しました。次回作の構想はありますか?
結城 現在、『小説すばる』にてビーバーイーツ(ウーバーイーツのパロディーです)の配達員たちを各話の主人公とする短編ミステリーを連載しているほか、長編では青春要素の強いミステリーを執筆中です。また、まだ構想段階ですが、相席居酒屋を舞台としたミステリーにも挑戦しようと思っています。
「本もまだまだ面白いでしょ?」「本だって、意外と捨てたもんじゃないでしょ?」と今の世の中に問いかけるような、そんな作品をつづっていけたらと思っています。
(聞き手/程原ケン)
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