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コロナ禍のスポーツ人口増加で需要大幅拡大「プロテイン市場」〜企業経済深層レポート

企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

今、空前の「プロテインブーム」だという。

プロテイン(英語)とは日本語で「タンパク質」の意味で、古代ギリシャでは「プロテイオス」という言葉で「最も重要なもの」を意味した。昨今「プロテイン」はサプリメント粉末として、アスリートの体づくりだけでなく、運動後のリカバリーやダイエットをサポートする栄養補助食品として広く販売されている。

では、どれほどブームなのか。食品業関係者が言う。

「大手市場調査会社の富士経済によれば、菓子や飲料などを含めたプロテイン補給食品の市場規模は2011年には約560億円でした。それが21年は約2200億円となり、この10年間で約4倍にも伸びています」

急成長の背景を経営コンサルタントはこう語る。

「1つはコロナ禍です。運動不足を解消するため、三密を避けながら自宅やジムでプロテインを飲み、体を鍛えたり、太りにくい体質をつくったり。つまり、健康と美容に資する食品としてプロテインが注目されているのです」

そして、もう1つはシニア層の急増だ。健康食品メーカー関係者が言う。

「総務省統計によれば20年の65歳以上の高齢者は3617万人で前年より30万人も増え、全人口に占める高齢者の割合は28.7%に。00年は2204万人で17.4%だったので、急速に増えているのが分かります。高齢者が注目するのは、いかに健康的に年を重ねるかということです」

説得力のあるアスリートもCM起用

医療関係者も指摘する。

「人間の身体は、おもに水とタンパク質から成り立っています。だからタンパク質不足は体にとって死活問題なのですが、高齢になるほど運動量・食欲ともに低下しがちです。そのため、健康志向の高齢者がこぞってジムなどで適度に運動し、食事だけでは足りないタンパク質をプロテインで補う人が増えているのです」

こうした2つの要素からプロテイン市場が急速に伸びているわけだが、では、どんな商品が人気なのか。

よく知られているのが、明治(東京)のプロテイン『ザバス』シリーズだ。食品アナリストが言う。

「明治のプロテインは、15年度の売上高は7億円でしたが、18年度には61億円に急増。そして19年度には130億円に達し、21年はさらに上積みの気配です。明治では今後も成長が見込まれることから、生産設備を増強する方向です」

『ザバス』は、多様な商品ラインアップを武器にCMにも力が入る。昨年からメジャーリーガー大谷翔平選手を起用した『ザバス』CM、『体感ザバス。きっと驚く』を打ち、プロボクシング界の寵児、井上尚弥選手らも愛用者として露出。今年6月からの新CMでは、人気俳優の山﨑賢人を起用し、プロアスリート以外の幅広い層に訴求する。

また昨年、プロテイン製造・販売大手のアルプロン(東京)が、食品大手の伊藤忠食糧(東京)と業務提携。食品業界関係者が言う。

「アルプロンは、5年前は約6億円前後の売り上げでしたが、21年4月期は約19億円と急拡大しています。今後は伊藤忠グループのコンビニなどに商品を納入、さらに売り上げを伸ばす構えです」

“プロテイン入り”表示で売り上げ増

森永製菓(東京)や森永乳業(同)も力が入る。

「森永製菓はプロテイン粉末のほか、手軽に摂取できる『inバー』や『inゼリー』など菓子を含めた多種多様な商品を販売しています。その一方で、グループ企業の森永乳業は、早期から展開してきたタンパク質入りヨーグルト『ギリシャヨーグルト パルテノ』を昨年4月にリニューアル。今年7月からは人気俳優の本田翼をCMに起用し、さらなる躍進を目指す。それと同時に、料理に混ぜ込む粉末タイプの『タンパク生活』を今年4月から新販売するなど、攻勢に出ています」(同)

スーパー関係者も言う。

「菓子やゼリーをはじめ、麺類などでも『プロテイン入り』と表示するだけで売り上げが伸びる傾向があり、最近では前年の2〜3倍増です。それだけ健康志向の方が増え、プロテインの大切さが浸透しているということです。まだまだ伸びそうな気配だけに、当スーパーでもプロテイン入りの商品を今後も大いに増やしていきたい方向です」

その半面、プロテインの摂取量には注意点もあるという。医療関係者が言う。

「プロテインは一度に消化吸収できる量が限られています。だから、過剰摂取すると肝臓や腎臓に負担がかかる。肝機能の数値が悪い人は大量摂取を控えたほうがよいでしょう」

医療関係者もタンパク質の重要性を説く一方で、過剰摂取の弊害も踏まえ、摂取目安を一般人では体重1キログラムにタンパク質1グラムがベターと指摘。アスリートなどは、体重1キログラムに対し2グラム程度が目安だという。

「肉や魚を普通に食べ、それでもタンパク質が不足する方、食欲がない高齢者など、そういった人たちがプロテインを摂取すれば効果が高まります」(同)

同分野には食品メーカー以外に、生活用品のアイリスオーヤマ(仙台市)など異業種からの新規参入も相次ぐ。市場は近い将来3000億円超えを睨むというから、今後も目が離せない。

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