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『予告漫画』が警告!“2025年7月日本壊滅説”大地震と大津波が襲う未来

(画像)Asier Romero / shutterstock

22年の沈黙を破り復刻された平成の奇書『私が見た未来 完全版』がベストセラーになる中、「本当の大災難は2025年7月にやってくる」という新たな予言が注目を集めている。近未来にいったい何が起こるのか!? 国難をもたらすという諸説を検証してみた!

「東日本大震災を予言していた」と、かねてから漫画『私が見た未来』は都市伝説好きな人々の間で話題となっていた。1999年に初版が発行された際の表紙には「大災害は2011年3月」と記されており、作者のたつき諒氏は「表紙絵の締め切りが迫っていたときに、夢で見たことをそのまま描いた」と、その旨を語っている。

漫画の内容も「たつき氏自身が夢で見たことが後年、現実に起きる」といったもので、これが本当に予知夢の類いなのか、あるいは創作と現実がたまたま重なっただけなのかは判断の分かれるところだろう。

21年に同書が「完全版」として飛鳥新社から復刊されると、現在までに56万部(電子版含む)を超える大ヒットとなっている。

「60代から70代の方を中心に〈ニュースと本の内容がシンクロしていてびっくりした〉〈『ノストラダムスの大予言』を読んだとき以来の衝撃〉など、たくさんの反響が届いています」(同書の編集を担当した飛鳥新社の杉山茂勲氏)

この完全版で〝新たな予知〟として提示されたのが、「本当の大災難は2025年7月にやってくる」というものである。これについて、たつき氏は「太平洋の日本とフィリピンの中間あたりで海面がボコンと盛り上がり、大津波が周辺各国を襲って、日本の太平洋側の3分の1から4分の1が飲み込まれる夢を見た」と語っている。

海が膨れ上がるということから想像できるのは、まず海底火山の爆発だろう。今年1月15日に発生したトンガ沖の海底火山の爆発は「数十年に一度の大噴火」といわれ、トンガ王国の首都ヌクアロファからわずか65キロ地点での発災ということで、8万人を超える被災者と4人の死者(関連死1人)が報告されている。

だが、同程度の火山噴火がフィリピン海であったとして、例えば東京との距離は1000キロ以上も離れているのだから、これが日本壊滅レベルの大災害になるとは考え難い。

計り知れない南海トラフの威力

有史以来最大と推定される1815年にインドネシアで起きたタンボラ山の大噴火でも、世界的な冷夏など深刻な被害を招くことにはなったものの、一国が滅びるほどのことではなかった。現にインドネシアは、今も存在して経済発展を続けている。

核兵器などの爆発という線も可能性は低い。米航空宇宙局(NASA)は、トンガ沖で起きた火山爆発の威力について、「広島に落とされた原子爆弾の数百倍に相当する」という科学的見解を発表した。現在、世界最大とされるロシアの水素爆弾、通称『ツァーリ・ボンバ』は広島型原爆の3300倍の威力ともいわれるが、それでも水中で爆発した際には水圧によって威力が減じられるため、これによって大津波が起きることは考えにくい。

東日本大震災で放出されたエネルギーは「広島型原爆3万発分」と推定されており、つまり『ツァーリ・ボンバ』を同時に10発、それも日本近海で爆発させてようやく同じくらいの被害になるわけで、これはいかにも現実味が薄い。

そうしてみると、やはり日本が壊滅するほどの津波となれば、その原因として最も有力なのは地震だろう。では、そんな大規模地震が起こる危険性があるのかといえば、これは「ある」としか言えない。

政府の地震調査委員会は1月13日、南海トラフで今後40年以内にマグニチュード8〜9クラスの巨大地震が発生する確率を、前年の「80〜90%」から「90%程度」に引き上げている。

南海トラフとは、静岡県の駿河湾から九州の日向灘沖にかけて、海洋プレートが沈み込んでいる溝状の地形になった区域のこと。地球の表面には、厚さ100キロにも及ぶ岩板の巨大プレートが14〜15枚、小規模のプレートが40枚ほどあり、それぞれの境目がぶつかり合ってゆがんでいる。そのひずみが限界に達すると一気にずれ動き、これが巨大地震発生のメカニズムだとされている。

南海トラフは、大陸のユーラシアプレートと海洋のフィリピン海プレートとの境目で、ここでは過去に100年から200年の間隔で、マグニチュード8クラスの巨大地震が発生している。

地震発生から富士山の噴火が…

南海トラフで巨大地震が発生した場合、最悪で32万人超が死亡し、経済的な被害は国家予算の2倍以上に当たる220兆円超と推計されている。東日本大震災が死者・行方不明者1万8425人(震災関連死を除く)、経済被害が約16兆9000億円(内閣府の推計)なので、南海トラフ地震の人的、経済的被害の大きさが分かるだろう。

また、南海トラフ地震は、富士山噴火につながる可能性が高い。日本周辺にあるユーラシアプレート、フィリピン海プレート、北米プレートの3つが、ぶつかり合うところに富士山がある。つまり割れ目の境界である。そのため、南海トラフ地震が起きてプレートの動きが活発化した際に、これが富士山にも影響を及ぼすことになるのだ。

子供の頃に「富士山は休火山」と学校で習った人もいるだろう。しかし、現在、休火山という分類は死火山とともに廃用となっている。年代測定法の発達によって過去の火山活動が明らかになるにつれ、数万年周期の噴火活動があることなどが解明され、有史時代の活動記録のみを基に、火山活動を判断できないことが分かってきたのだ。1979年には死火山と思われていた木曽の御嶽山が、突如として噴火した例もあった。

6月18日には警察庁が「富士山噴火対策」として、首都圏をはじめとする各地の警察に粉じん防護マスクを配備するなどの動きもあり、富士山噴火は極めて現実的な問題と考えられている。

富士山が噴火した場合の被害としては、これは噴火の規模や噴火前後の天候、風向きなどによっても違ってくるが、最悪のケースでは東京の新宿近辺でも累積10センチ近い降灰があるという(内閣府・中央防災会議の報告書より)。

そうなると、航空、鉄道、道路など首都圏の交通機能が麻痺するのはもちろん、火山灰が精密機器に入れば誤動作や故障が頻発し、雨が降れば電気設備に付着して停電が起きることが考えられる。

火山灰の付着、火山ガスによる農作物の変色や損傷、土壌環境の悪化や日照不足による発育不良、さらには人間が直接吸い込むことでの健康被害もあって、その被害総額はやはり数百兆円にも上るとの推計もある。

南海トラフ地震や富士山噴火が、遠くない将来の現実的な危機として存在しているのは確かなことであり、2025年どころか明日起きても不思議はないというのが実際のところなのだ。

もう1つ、いつ起きてもおかしくない災害に「太陽フレア」がある。

1月12日、総務省が太陽活動の観測や影響の予報を強化するために有識者組織『宇宙天気予報の高度化のあり方に関する検討会』を立ち上げ、同会議は6月21日に「宇宙天気予報士」の制度化や、宇宙天気の予測強化に向けた「宇宙天気予報オペレーションセンター」の新設を国に提言している。

「宇宙天気とは、太陽と地球の間で起きる現象を指します。例えば太陽表面の爆発現象である太陽フレアでは、噴き出たガスの流れである太陽風が起きて、これが地球に届くと磁場が荒らされてさまざまな障害が発生します。また、爆発とともに強力なエックス線や電磁波、放射線粒子も放出され、人工衛星が故障したりGPS(全地球測位システム)に異常をきたしたりするのです」(京都大花山天文台『宇宙天気基礎講座』の講師を務める柴田一成・同志社大特別客員教授)

ピークは2025年7月ごろ

実際に1989年3月13日には、カナダのケベック州で太陽風による史上最大級の磁気嵐が発生。ハイドロ・ケベック電力公社の電力網を破壊し、9時間にも及ぶ大規模停電を引き起こしている。

総務省の有識者会議では、100年に1回起きるとされる大規模な太陽フレアによる電磁波が、2週間連続で到来した場合の〝最悪シナリオ〟として、スマートフォンの通信障害、航空機の運航抑制、広範囲に及ぶ大規模停電などを挙げている。

ただし、太陽フレアについては、ある程度の事前予測も可能だと考えられているようだ。

「日本にはすでに『宇宙天気予報』という用語もあって、20年ほど前から国の情報通信研究機構(NICT)がホームページで情報を発信しています。フレアを予測する際の指標になるのは、太陽表面にある黒点で、その数や大きさを分析すると発生確率や規模がある程度まで分かります。精度はまだ十分ではないが、地震に比べるとはるかに予測しやすいと言えるでしょう」(柴田教授)

とはいえ、社会生活全般にわたって衛星通信の重要度が増している近年、大規模な太陽フレアが起きたときに被害がどこまで及ぶのか、いまだ推測できない部分も多い。

もしも直近で太陽フレアが起こるとの予測が出されたとき、現在において個人レベルでできる対策としては、GPS不能による交通麻痺を回避するために外出を控え、電子機器の不調や故障を防ぐために電源を切っておく――ということになるだろうか。

太陽活動の活発化はすでに始まっており、ピークを迎えるのが2025年の7月ごろだと予測されている。となれば、冒頭で紹介した漫画『私が見た未来』が予知した〝本当の大災難〟の時期と一致する。偶然と言ってしまえば、その通りかもしれない。地震と太陽フレアは別物だと考える向きも当然あるだろう。

しかし、20年にはイギリスの国際的な科学誌『ネイチャー』に〈太陽活動と地震の相関関係を過去20年にわたって調べた結果、太陽活動の活発化と地球の大地震に関連があることの信頼水準は非常に高く、99.999%以上となる〉との趣旨の論文が掲載されている。

まだ確定した学説ではなく、「太陽フレアは、小規模なものを含めれば常に起きているのだから、地震発生時に太陽フレアが起きているのは当たり前のこと」という批判もある。しかし、同誌に掲載される論文はその分野の専門家が内容の妥当性をチェックしたものであるため、まるっきりデタラメとも断じ難い。

そもそも地震発生のメカニズムも、一応は「地殻プレートにひずみがたまり、これが限界に達すると亀裂が入ったり、大きく動いたりする」というのが定説とされているが、あくまでも推論であり、「太陽フレアによる電磁波が地殻プレートに作用して、それが地震発生の引き金になっている」という学説を唱える研究者もいる。

いずれにせよ、地震や火山噴火だけでなく、津波、台風、洪水、土砂災害など、多種多様な自然災害が日本ではしばしば発生し、その頻度や被害規模も年々増加している。太陽フレアによる停電や電波障害と、南海トラフ地震と富士山噴火が一度に起きてしまう可能性も、決してゼロではない。

災害はいつ起こるか分からないので、その瞬間にパニックを起こさないよう、日頃から災害時にどうするかという自分なりのシミュレーションをしておきたい。緊急時のため食料や水を備えておくことが、結局は重要なのである。

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