政府が海外からの観光客の受け入れを再開(6月10日)したことで、全国の観光業界は中国人観光客に期待を寄せているが、中国ではコロナ禍とその対策によるロックダウンの長期化で、公務員や民間企業社員の大幅な「賃下げラッシュ」により、当てが外れそうだ。
「今の中国人は、旅行どころではありません。中国各地で公務員の賃下げが起きている。民間企業でも賃金カットが続出している。インバウンドは再開しましたが、中国からの予約は伸び悩んでいるのが実情です」(経済ジャーナリスト)
中国の地方政府の財政は国有地使用権を売却して得る収入に大きく依存している。しかし、土地使用権の買い手である不動産企業が経営難に陥っているため、売却が思うように進まず収入が大幅に減少しているのだ。反対に、支出面では新型コロナ対策費が重くのしかかっている。
「住民に求めるPCR検査費用は、主に地方政府が負担している。今年1月から4月まで約1500億元(約3兆円)。これに加え、ワクチン接種や入院費などもある。地方政府は少しでも財政赤字を減らすため、公務員の給料カットに着手するしかないんです」(大手商社マン)
日本に旅行に行ける状態ではない
コロナ禍で景気も急速に悪化。しわ寄せは民間企業にも波及し、人件費を減らすために従業員に自主減給申告書の提出を求める動きが相次いでいるという。
「減給を拒否すれば、自主退職を迫られる。やむを得ず、賃下げを受け入れるしかないんです。個人消費も冷え込んでいます。中国の国内総生産(GDP)の3割近くは不動産業が生み出す収益ですが、春先からのゼロコロナ政策により、個人のマンション購入需要も落ち込んでいる。とても日本に旅行に行けるような状態ではありませんよ」(中国通の経済アナリスト)
コロナ禍前の2019年には、1000万人近い中国人観光客が来日し、全体の約3割を占めていた。
「今回はその半分どころか、10分の1という悲観的な見方もあるほどです」(同)
〝爆買い〟ブーム再来は、夢のまた夢。
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