『ボイリング・ポイント』
製作・監督・脚本/フィリップ・バランティーニ
出演/スティーヴン・グレアム、ヴィネット・ロビンソン、レイ・パンサキ、ジェイソン・フレミング、タズ・スカイラー
配給/セテラ・インターナショナル
いきなりですが、これはすごかった! なんと激アツの、全編ワンカット90分間の作品。
アメリカの映画批評サイト『Rotten Tomatoes(ロッテントマト)』の評価で驚異の99%フレッシュを獲得し、数多くの映画祭でノミネートや受賞もされています。これまでもワンカットの映画作品はありましたが、この緊迫感とワクワク感は初めて経験しました!
人気の高級レストランを舞台に、ドキュメンタリーのように演じているのは俳優たち。それを忘れさせてしまうほど、本物のレストランのひとときを見ているよう。外食が大好きな人は、特に興奮すると思う。共感できますし、裏でこうなってたら…と想像するだけでも面白いはずです。
最高なのはカメラワーク。オーナーシェフのアンディ(スティーヴン・グレアム)はもちろん、ワンカットの中で働くスタッフをうまく切り換えながら、彼らの様子を捉えていきます。アンディは離婚したばかりで、疲れ切っていたクリスマス前の金曜日。まさに稼ぎ時に、こんなスリリングなことが起こってしまうとは!?
レストランの中には一生懸命頑張るスタッフもいれば、新人でなかなか思うように動けなかったり、仕事中なのに悪さをする人も…。また、店内のお客様もうまく描いている。どこかで遭遇したことあるようなワインにうるさいオジサンや、サービススタッフに必要以上に強く当たったり…。さらに、自分がインスタグラマーだから偉ぶってたり、料理批評家が来てしまったりと、本当にさまざま。
爽快に仕上がったワンカット90分間
これらがすごいスピードで描かれていて、思わず声を上げてしまうほど大変な出来事がいっぱい起こり、ラストに向かって突き進みます。見終わったあなたは、ワインを飲みに行きたくなること確実。鑑賞前に、お気に入りのレストランを予約した方がいいかも!
しかし、冷静に考えると、この物語を完成させるのに、どれだけリハーサルしたのか…。間違えたら最初からやり直しなので、俳優も緊張したでしょうね。でも、そんな心配をも吹っ飛ぶほど爽快に仕上がっています。
この映画は、レストランが舞台ですが、おいしそうな料理のアップよりも人間模様を見てほしい。最高のフルコースをいただいたくらい、満足な気持ちになるはず。はい、私はもう一度見ます。それだけ好きな1本です!
ちなみに、撮影の舞台となったレストランは実在するお店です。今年のクリスマス前に、ここでワインを飲みながら人間ウオッチングした〜い!
LiLiCo
映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。
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