5月16日、東京・多摩地域を代表する老舗の和菓子店『紀の国屋』が、東京地裁に自己破産を申し立て、廃業を発表した。
同店の看板商品は、ほぼ立方体の最中に上質な大納言餡や栗餡を詰め込んだ『相国最中』や、黒糖や黒蜜を生地に練り込んだどら焼き『おこじゅ』などで、多摩地域の駅ビルや百貨店に出店して、相応の知名度を有していた。
そんな『紀の国屋』の廃業劇に、多くの地域住民は衝撃を受けているが、実は現在の和菓子業界が抱えている問題点を改めて浮き彫りにした事例とも言える。
民間信用調査会社の社員が指摘する。
「和菓子は特に50代以上の女性から熱烈に支持され、この層は百貨店での購買機会が最も多い。しかし、コロナ禍以前から百貨店の売り上げは低迷し、顧客の高齢化が問題視されていました」
遅れてしまったオンライン対応
また、今年は原材料価格の高騰に各業界が苦しんでおり、和菓子業界においても小麦や小豆などは輸入シェアが高く、その影響を大きく受けている。
そして、最大の課題はオンライン対応の遅れだという。和菓子業界は地域に根差した家族経営の企業が多く、そのため(おいしいものを作れば、お客さんは離れない)という考え方にこだわり過ぎて、いまだにホームページなどを軽視する傾向がある。
「そもそも高齢のため、パソコンすら触ったことのない経営者も、ざらにいるのが現状です」(前出・調査会社社員)
現在も「あの味がもう食べられないなんて」「もっと早く苦しいと言ってくれれば、たくさん買ったのに」など、ネット上には『紀の国屋』の廃業を惜しむ声が後を絶たない。
日本の和菓子業界に危機が迫っている。そのことを多くの甘党は認識しておいた方がよさそうだ。
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