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北朝鮮で“人肉食事件”再発の惨劇か…ロックダウンで食糧不足が加速!

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(画像)Maxim Studio/shutterstock

北朝鮮で前年の蓄えが底を突き、食べるものがなくなった「絶糧世帯」が続出している。

金正恩総書記は、昨年末の党中央委員会総会で食糧不足の改善を約束したが、新型コロナウイルスの感染症状とみられる「原因不明の発熱者」が爆発的に急増したことで、この約束は水泡に帰した。

「新型コロナの発生で、5月12日の午前から全国で地域別にロックダウンが始まり、5月9日に開始された『田植え戦闘』への動員率が30%程度に落ちてしまった。そのため、5月20日までに田植えを終えた地域は、水田全体の3~4割にとどまっています」(北朝鮮ウオッチャー)

新型コロナを警戒するあまり、2020年1月から〝鎖国〟を断行したあおりで、北朝鮮では農機具や肥料が大幅に不足している。おまけに降水量不足とコロナ禍による人手不足が重なり、現在、農業は「不足の四重苦」にあえいでいる。

「また、深刻な少雨の影響で、米に代わる食糧と期待されていた麦が枯れてしまい、金ファミリーなどの特権階級を除いて栄養が足りていない。そのため、無理に作業を行って事故を起こすケースも増えています。このままロックダウンが続けば、金正日体制下の1994年から98年にかけて大飢饉で200万人近くが餓死した『苦難の行軍』時代の再来となるでしょう」(同・ウオッチャー)

90年代後半から庶民は配給への期待を捨て、「チャンマダン(闇市)」を利用するようになったが、今でも農村部には市場などがほとんどなく、家畜を飼わない限り食肉は難しい。そこで蘇るのは「人食い」の悪夢だ。

「06年5月、脱北者として初めて亡命が認められた6人が、米上院で記者会見を開いたのですが、その場で『苦難の行軍』時代に、他人や自分の子どもを殺して食べたという惨劇が起こったと証言したのです」(国際ジャーナリスト)

栄養失調者が大量感染したら…

また、脱北者の救出活動を続けている韓国のキリスト教団体『カレブ宣教会』も、11年6月20日に人民保安省(現:社会安全省/北朝鮮の警察庁に相当)が発刊した資料の一部を公開した。その中で、90年代半ばに人肉食事件が複数発生したと報告されている。

その中には労働災害で体が不自由になり、警備員として働いていた男性が飢えに耐えきれず、同僚を斧で殺害。遺体の一部を食べ、残りをラム肉として闇市で販売して摘発された事件が、一例として記されていたという。

世界食糧計画など国連の人道機関の統計によると、北朝鮮は全人口の約4割が栄養失調、すなわち免疫力が落ちている状況にある。コロナ対策として封鎖や隔離だけに頼れば、大量の餓死者が発生するのは当然だ。

「正恩氏は中国に支援を要請しただけでなく、国際社会にもSOSを発しています。5月21日に訪韓したバイデン米大統領は、米韓首脳会見において『北朝鮮にワクチンを提供できると伝えているが、返答はない』とコメント。尹錫悦韓国大統領も『対話の扉は開いている』と、ワクチンなどの提供を呼び掛けていますが、正恩氏の自尊心から米韓の支援は絶対に受けないでしょう」(外交関係者)

その理由は、仮に韓国からの援助を受ければ、正恩氏は尹政権に頭が上がらなくなるだけでなく、「国防5カ年計画」の目玉であるミサイルの発射や核実験ができなくなるからだ。つまり国民の命よりも、核・ミサイル開発の推進を優先させていることになる。

「北朝鮮は昨年、国際的ワクチン供給プログラム『COVAX(コバックス)』からの中国製ワクチン(シノヴァク)300万本を供給するという申し出を断っています。ロシア製『スプートニクV』も同様です」(同・関係者)

7回目の核実験準備は整っている

北朝鮮が求めるワクチンは、正恩氏が信用していない中国製ではなく米国製だが、モデルナ製はともかくファイザー製は、マイナス20度のコールドチェーンを必要とする。たびたび停電する北朝鮮では、貴重なワクチンもただの水に変化してしまうだろう。

「たとえ効果を期待できなくても、国民を落ち着かせるため、北朝鮮は中国製のワクチンや医療システムに頼らざるを得ないのが現状です」(同)

米国は、北朝鮮が7回目の核実験の準備をすべて終え、実施のタイミングを見計らっている段階だという見方をしている。

「豊渓里にある核実験場の3番坑道周辺で、継続的な行動が観測されており、寧辺にあるプルトニウム生産工場もフル稼働中で、いつでも豊渓里に運ぶことができる。どこからどう見ても核実験の実施が可能な状態です」(軍事ライター)

正恩氏が最も恐れるのは、内部統制が利かなくなることだ。国内を早く安定させるために、核実験を通した結集効果を狙うことは十分に考えられる。しかし、想定を超えるコロナ禍で事情が変わったとも言われる。

「核実験には中国が反対しているため、それを無視して実施すれば医療支援を受けられなくなる可能性が出てきます。中国が黙認しているICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射ならあり得るとみられていましたが、案の定、24日まで日韓を歴訪していたバイデン米大統領が帰国した直後、平壌の順安空港一帯から日本海に向け連続して3発の弾道ミサイルを発射。そのうちの1発が新型のICBMだとみられています」(同・ライター)

文字通り〝人を食った〟行為だ。

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