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日本全国☆釣り行脚~『タイリクスズキ』~高知県高知市/神田川産

タイリクスズキ釣り
タイリクスズキ釣り! (C)週刊実話Web

『高知にはカレンダーにはない新しい休日があります。川曜日、山曜日、海曜日。かれこれ30分、海を見ています。あなたに、新休日…。』

往復の全日空機内でモニターを眺めていたところ、こんなコマーシャルが流れてきました。面積の8割以上を森林が占め、南側にはどど~んと太平洋が広がっている高知県には、四万十川や足摺岬、龍河洞、桂浜など全国的にも知名度の高い素晴らしき自然豊かな名所が多くあります。

でも、ワタクシは重度のD専(ドブ愛好家のこと)という変態です。若くてきれいな嬢よりも、くたびれ果てたババアに欲情してしまう人がいるように、澄んだ白砂の海岸よりも、妖しく濁ったドブに激しく萌えるのであります。

ということで、日が暮れる頃に市内の釣具店でエサを買い、妖しく濁った水辺を目指して、住宅街を流れる神田川へと向かいました。♪あなたはもう忘れたかしら~の歌で有名な「かんだがわ」ではなく「こうだがわ」と読むのがまたオツじゃないですか。

〝カミソリ護岸〟が高くそびえる神田川(こうだがわ)
〝カミソリ護岸〟が高くそびえる神田川(こうだがわ) (C)週刊実話Web

川の両岸にはコンクリート製の無機質な〝カミソリ護岸〟が高くそびえ、川の流れからは、そこはかとなくせっけんの香りのような生活廃水臭が…。いかにもワタクシ好みな典型的なドブ川であります。も、もう…このシチュエーションだけでガマン汁が…ハアハア。

ドブ川は栄養が豊富…魚影は濃いハズ!

甘く漂う生活廃水臭に逸る気持ちを抑えつつ、電気ウキの仕掛けを作ります。暗い水面を流れていた電気ウキの光がその動きを止め、やがてモワァ~ッとドブの中に引きずり込まれる様を想像すると…。もういてもたってもいられず、ささっと仕掛けを投げ込みます。はるか下の川面を適度な速さで流される電気ウキの赤い灯り。今にも沈みそうな気配がプンプンと漂いますが、一向に変化はありません。う~ん、そんなハズはないのだが…。

こういったドブ川は水中に諸々の栄養が豊富なため、よほど荒廃していない限りは、魚影が濃いものなのです。

静かな夜の住宅街で、そこはかとない生活廃水臭に包まれ、電気ウキを眺めるひと時。これぞ新休日! 変態にとって魅惑のドブ曜日です(アホ)。

かれこれ30分、暗いドブを見ています。でも、魚のアタリはありません…。

そこでもう1本竿を出し、こちらは重いオモリを付けた仕掛けで投げ込んでおくことにします。エサをたっぷり付けた仕掛けを放り込み、竿を護岸に立て掛けて放置。もちろん、大物が掛かってもいいよう、道糸が出ていくようにリールをセッティングして再び電気ウキ釣りに戻ります。

「ジィ~ッ!」

電気ウキの光を眺めていたところ、先ほどの竿の方から、糸が引き出される音が聞こえてきました。すぐに駆け寄ると、竿が護岸に引っ掛かってヤジロベエ状態になっているではありませんか! 慌てて竿を手に取ると「ズンッ!」という重量感とともに力強い手応えが伝わります。

「ドブ最高~!」

小躍りしながらヤリトリを開始すると、思いのほか力が強くなかなか浮きません。下へと突っ込む動きはキビレ? それともクロダイ? イヤ、それにしては重すぎません?

やがてはるか下の水面に銀色の魚体が見えましたが、そこからまた力強く走って寄ってくれません。玉網を手に階段を降りながらやや強引に寄せると…おおっ、スズキだ!

いつもスズキとはちょっと違うタイリクスズキ
いつもスズキとはちょっと違う「タイリクスズキ」 (C)週刊実話Web

最後の抵抗をかわして無事に取り込み、護岸に引き上げます。ん? 何となくいつものスズキと違うような…。

ドブ川で釣り上げた魚特有のほのかな青臭さが…

太めの魚体に寸詰まりな頭部、小さい黒点、背ビレの明確な黒斑…。この特徴から判断するに、コイツは四国、九州でよく釣れるタイリクスズキですな。こういうのがいるのよ、ドブにも♪

元は四国や九州の一部で養殖されていた中国産種苗が脱走し、自然繁殖したとされるタイリクスズキ。スズキより大型化するため、当地ではルアーの人気ターゲットになっております。

そんなタイリクスズキを刺身にして晩酌を楽しみたいと思います。

タイリクスズキを刺身にして晩酌
タイリクスズキを刺身にして晩酌 (C)週刊実話Web

栄養豊富なドブ川に居着いていたせいか、思った以上に脂が乗っており、やや白濁した腹身などは実に旨そうです。では、いただきま~す…。

まあ、やはりといいますか、この手のドブ川で釣り上げた魚特有ともいえる、ほのかな青臭さが若干感じられます。噛むうちに上品な白身の甘さも感じられるので、何とももったいないのですが、この臭いはドブで釣り上げた魚を食べる際の定めともいえましょう。悔いはおまへん。

麗しきドブ曜日を『土佐しらぎく ひやおろし』で締めくくり、心地よく眠りに落ちたのでありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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