魚類の世界的な乱獲や地球温暖化による海水温の上昇などで、日本の漁業が危機的状況とされる中、消えたといわれていたニシンが、北海道小樽市周辺で数年前から群来。ニシンは別名〝春告魚〟と呼ばれる通り、今春も道内のニシン漁は大漁続きに沸いている。
「ニシン漁は江戸時代から始まって、小樽市にニシン御殿が建つほどの好景気だったのですが、戦前から不漁続きで〝幻の魚〟といわれるようになったのです。ニシンの魚卵の数の子は、黄色いダイヤとして珍重がられている。ニシン豊漁で数の子も安くなると思います」(漁業ライター)
ニシン漁は、1897年(明治30年)に漁獲量のピークを迎えた。
「小樽市の観光名所になっている鰊御殿(にしんごてん)や銀鱗荘(ぎんりんそう)は、もともとズバリのニシン御殿です。明治から大正にかけて繁栄した小樽のニシン漁。春先の2、3カ月だけで1年間の生活ができたといわれているほどで、御殿と呼ばれたのは、内部に本州から移入された檜や木目の美しいケヤキ、タモなどを使用しているから。廊下などには漆喰を施して、洋式の工法も取り入れた贅沢三昧の建物です」(札幌在住のフリーライター)
市場では取扱量が前年比2.5倍に!
全盛を極めたニシン漁は乱獲により、1954年に余市町から小樽市にかけての沿岸で群来が確認されて以降は見られなくなり、57年、ついにニシン漁自体が途絶えた。
「96年に北海道主導でニシンの産卵場所の形成や放流後の資源管理を行う『日本海ニシン資源増大プロジェクト』がスタート。99年には留萌市の海岸で45年ぶりに群来が確認されました。10年後、石狩湾の数カ所でも群来が見られるようになったのです」(前出の漁業ライター)
江戸時代の北前船の終着地だったことで、ニシン漁や交易で栄えた江差町にも、2017年に104年ぶりにニシンの群来が確認され、豊漁が続いている。函館市の市場では地元産のニシンの取扱量が前年比2.5倍になっているという。
ロシアのウクライナ侵攻で、サーモンやカニ、ウニなどの価格が高騰する中、ニシンの大漁は朗報だ。
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