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『雌伏三十年』著者:マキタスポーツ〜話題の1冊☆著者インタビュー

『雌伏三十年』著者:マキタスポーツ/文藝春秋

『雌伏三十年』文藝春秋/1870円

マキタスポーツ
1970年生まれ、山梨県出身。芸人、ミュージシャン、役者、文筆家。2012年公開の映画『苦役列車』で第55回ブルーリボン賞新人賞、第22回東スポ映画大賞新人賞をダブル受賞。サブカル青春漂流記ともいえる自伝的小説『雌伏三十年』で作家デビュー。

――お笑い芸人、ミュージシャン、俳優とマルチに活躍するマキタスポーツさんですが、そもそも小説を書き始めたきっかけはなんだったのですか?

マキタスポーツ(以下マキタ) 雑誌『文學界』から「書いてみないか?」とお誘いを受けました。自伝的なものなら書きやすいかと思ったのですが、逆に大変でしたね。忘れたい過去まで思い出してしまうのですが、そこまでさらけ出さなければ面白くないのではないか、という悪魔のささやきで、結局ぜんぶ書いてしまいました。正直、家族には読んでほしくありません(笑)。でも、自分の死後この小説が残っても、「これが俺だ!」という気構えはあります。

――ほぼ〝私小説〟というわけでしょうか?

マキタ 設定やキャラクターは少し変えてありますが、山梨から上京し、やがてバンドを結成するも解散、というメイン・ストーリーは、ほぼ実話です。ずっと下積み生活を送っていたのが、映画に出て注目される…という部分も、私が出演した2012年公開の映画『苦役列車』を連想させるかもしれませんね。

小説を読むのは苦手…

――ずいぶんご苦労されたわけですね?

マキタ いや、売れてからのほうがかえって苦労しましたね。インプットの時間が取れず、自分が削り取られていくような感覚がありますし…。今思えば、売れなかった『雌伏』の期間は、自分にとって必要な準備期間だったような気がします。

――映画『苦役列車』といえば、先日亡くなられた作家・西村賢太さんの原作です。西村さんなど意識された作家はいますか?

マキタ 実は私小説を読むのは苦手なんです。賢太さんは本当に本が好きな方で、その読書経験の中で生まれた〝やむにやまれぬ心境〟を書いてらっしゃると思うので、私とは資質が違うと思います。

私が好きな作家は、内田春菊さん、山田詠美さんなどですね。昔は星新一さんや筒井康隆さんのショートショートも好きでした。最近小説を書く芸人が増えてきていますが、なかでも又吉(直樹)君は突出していると思います。『火花』を読んで、ここまで文学が好きなんだ、とびっくりしました。独特の叙情、美学を感じますね。

――次回作の構想や他にやってみたいことはありますか?

マキタ 次は全く毛色の違うものを書いてみたいですね。また、『雌伏三十年』の映像化には、ぜひともチャレンジしてみたいと思っています。自分が主人公を演じるというのも面白そうですね。

(聞き手/程原ケン)

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