3月27日に幕を閉じた大相撲春場所は、これまでとは全く違った顔触れが大活躍。優勝決定戦にもつれ込む熱戦の末、新関脇の若隆景が、大関経験もある平幕の高安を土俵際の驚異的な粘りで破り、初優勝した。
新関脇の優勝は、あの69連勝した不世出の横綱、双葉山以来、実に86年ぶり。
また、福島県出身者の優勝は初代の栃東以来、50年ぶりのことだ。
身長181センチ、体重130キロの小柄な体をものともせず、連日、強烈な左右のおっつけで大きな力士たちを圧倒し続けた若隆景は、すでに1男3女の父親だけに落ち着いたもの。
「うれしいです。けど、来場所からが大事。(郷里の福島は)震災から11年たってまだ復興が進んでいないところもあるので、自分が土俵で精いっぱいやって、いい姿を届けたい」
大相撲界に異色の大関候補出現
この快挙で一躍、次の大関候補の一番手。その身体能力のすごさは入門したときから群を抜いており、長兄の若隆元(幕下)、次兄の若元春(幕内)ら〝大波3兄弟〟をスカウトして育てた先代荒汐(2020年3月に停年退職)の鈴木栄二さんは、こう話す。
「入門時に50メートルを5秒台で走るなど、下半身の瞬発力や左右からのおっつけには目を見張るものがあった。口を酸っぱくして言ってきたのは、下から攻めろということ。そうすれば自然に重心が下がり、体の小ささも関係ありませんから」
すでに、好角家の間では「栃ノ海2世」「千代の富士の再来」と、かまびすしい。しかし、この異色の大関候補の出現で、大相撲界の勢力図も大きく様変わりするのは確実だ。
「これまで大相撲界の覇権は、白鵬、照ノ富士と続く伊勢ヶ濱一門が握って離さなかった。しかし、白鵬が引退し、照ノ富士にも陰りが見えたことで、先場所は御嶽海、今場所は若隆景が優勝した。この2人、一門は違いますが、ともに東洋大の出身。来場所からが楽しみです」(担当記者)
東洋大時代の到来か。
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