『阪神・四番の条件 タイガースはなぜ優勝できないのか』幻冬舎新書/946円
掛布雅之(かけふ・まさゆき)
1955年、千葉県出身。習志野高校卒業。73年、ドラフト6位で阪神タイガース入団。本塁打王3回、打点王1回、ベストナイン7回、ダイヤモンドグラブ賞6回、オールスターゲーム10年連続出場などの成績を残し、「ミスター・タイガース」(4代目)と呼ばれる。88年に現役を引退。
――昨年は新人の佐藤輝明が4番を務めるも不調で二軍落ちしてしまいましたね。
掛布 確かに後半失速したものの、1年目のルーキーとしてはよくやったと思います。前半の阪神の快進撃は間違いなく佐藤の活躍により勢いがついたところが大きいでしょう。プロで1シーズン戦う体力がついてくれば、年間通して活躍してくれるでしょうね。
シーズン途中で二軍落ちしてしまいましたが、それならばもう少し状態がよくなるまで我慢し、調整を続けたほうがよかったと思います。チーム事情などを考えると難しい判断だったのでしょうが、一軍昇格後の佐藤のバッティングを見ると、二軍での調整はいったい何だったんだろうと疑問を抱いてしまいました。
――阪神の4番打者に求められる条件とは?
掛布 個の力(数字)をもってチームを勝たせると同時に、チームの負の部分も背負わなければならないのが4番です。〝4番の定義〟としては、打率.280、30本塁打、90打点が基準になるでしょう。
“5代目ミスター・タイガース”は?
私の場合は、田淵幸一さんという偉大な4番がおり、田淵さんの立ち居振る舞いや背中を見てさまざまなことを教えられました。自分にとって、とても大きな財産になりましたね。田淵さんはチームが打てなくても、勝てなくても、敗戦の責任をすべて背負い込んでくれた。人柄的にもおおらかで、あんなにいい人はいませんね。
――佐藤輝明は5代目ミスター・タイガースになれると思いますか?
掛布 なれるかどうかではなく、ならないといけないと思っています。セ・リーグにはヤクルトの村上宗隆、巨人の岡本和真という若い主砲がいますが、彼らと比べるとまだまだ強さ、怖さがありません。
彼らと戦い、数字を残しタイトルを勝ち取ることができれば、自信と風格も備わってくるでしょう。その時こそが、〝5代目ミスター・タイガース〟の誕生となるでしょう。
――今季の阪神は優勝できるでしょうか?
掛布 優勝できる戦力は整っていると思います。しかし、他のチームも戦力を上乗せしてきており、今年はどこが優勝してもおかしくない団子状態だと思います。残念ながら新型コロナウイルスの影響でキャンプ取材ができておらず、正直、現時点で順位を予想するのは難しいです。
ただ、阪神が優勝するための〝絶対条件〟は、開幕して1カ月のスタートダッシュでしょう。流れに乗れることができれば、かなりの確率で優勝が見えてくるでしょうね。
(聞き手/程原ケン)
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