3月2日に欧州連合(EU)が、世界の金融機関の送金業務を担う国際銀行間通信協会(SWIFT)から、ロシアの大手銀行7行を締め出すことに合意した。
しかし、最大手のズベルバンクと3位のガスプロムバンクは、制裁の対象から外れた。
もともとロシアを国際金融取引から締め出す金融制裁は、中国という抜け穴が存在していたのに、このことで欧州連合は自ら大きな穴を開けてしまったことになる。
理由は明白だ。完全な制裁を科すと、ロシアから天然ガスを輸入できなくなってしまうからだ。3月3日の日本経済新聞(電子版)によると、欧州はロシアからの天然ガスが途絶した場合、地理的に近い北米やアフリカから最大限に調達しても、消費量の約1割が不足するという。
ロシアの天然ガスを止められないのは日本も同じだ。日本は石油および天然ガス開発事業「サハリン2」からの輸入を継続している。この天然ガスも国内消費の1割を占めている。
ロシアのウクライナ侵攻以降、供給不安への懸念から原油価格や天然ガス価格が暴騰している。そのことはエネルギー消費国の経済に大きな負荷をかけているだけでなく、世界中から輸出国であるロシアに対し、事実上、戦費を供与しているのと同じことになっているのだ。
平時には、ロシアの輸出のおよそ半分が、原油、天然ガス、石炭の鉱物性燃料だった。だが、その値段が3倍以上に跳ね上がっているのだから、実はいまロシア政府は、濡れ手に粟で儲かっている。
だから、ロシアに厳しい経済制裁を科すための最善の方法は、世界が協調して省エネを図り、エネルギー価格を下げることなのだ。
短期的には、不要不急の乗用車利用を控え、運転する場合は急発進を避けるようにする。それだけで1割くらいの省エネは十分可能だ。
日本から世界へ発信する温暖化対策
家庭では、こまめに電気を消し、暖房の設定温度を下げる。そんなことで電力消費が減るのかと疑問に思われるかもしれないが、東日本大震災の翌年に当たる2012年、国内の1次エネルギー供給量は、その2年前と比べて6%も減少している。
1割程度の省エネでエネルギー価格が下がるのかと思われるかもしれないが、現在の価格高騰は需給がひっ迫した結果ではない。戦争による供給不安を口実に、投機筋が値段を吊り上げているのだ。
新型コロナの感染拡大でエネルギー需要の減少が懸念された一昨年4月、ニューヨーク商品取引市場で、WTI原油価格がマイナスに落ち込んだことを忘れてはならない。
そして中長期的には、いまこそ「脱・化石燃料」を図るべきだろう。日本でいえば、太陽光発電などの再生可能エネルギーを増やす、住宅の断熱性を高める、薪ストーブを普及させる、エネルギーをがぶ飲みするタワーマンションの建設を規制するなど、やれることはいくらでもある。
そうした努力は、温室効果ガスの削減によって、地球温暖化を防止するという世界規模の利益につながるだけでなく、化石燃料の輸出国の政治情勢に、国内経済が振り回されることがなくなるという効果を得られるのだ。
もちろん省エネでエネルギー価格を引き下げるためには、世界が同時に行動する必要がある。岸田文雄総理はエネルギー価格高騰を受けて、すでに国民に省エネを呼びかけている。
ただ、その呼びかけを国内から世界に向けて発信することが、日本がウクライナ支援のために一番貢献できる手段ではないだろうか。
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