ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月24日朝、テレビ演説で「特別軍事作戦」を実施すると発表し、陸海空からウクライナ侵攻を一斉に開始した。
20年以上にわたって事実上の独裁者として君臨するプーチン氏は、莫大な隠し資産を保有しているとの指摘もある。
〝皇帝プーチン〟の女とカネ、そして頭の中はどうなっているのか。
クレムリン(大統領府)の資産報告書によると、プーチン氏の2020年の収入は1000万ルーブル(約1360万円)で、約77平方メートルのアパート、ソ連時代の高級スポーツカー2台、オフロード車1台、トレーラー1台を所有と、世界を代表する首脳としては控えめだ。
だが、複数の証言や流出した文書から浮かび上がるプーチン氏の資産の実態は大きく異なる。
17年、ロシアで活動していた「エルミタージュ・キャピタル・マネジメント」のビル・ブラウダー氏は、米上院司法委員会でプーチン氏の隠し財産は2000億ドル(約23兆円)に上ると推定した。
米経済誌『フォーブス』が発表した21年の世界富豪番付では、「アマゾン・ドット・コム」創業者のジェフ・ベゾス氏の資産額が1770億ドル(約20兆3550億円)で首位、電気自動車大手「テスラ」のイーロン・マスクCEOが1510億ドル(約17兆3650億円)で2位だった。プーチン氏の資産に関する推定が事実だとすると、紛れもなく同氏が「世界一の資産家」ということになる。
20年にはロシアの反体制指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が、プーチン氏が所有するものだとして、ロシア南部の黒海に面したリゾート地、ゲレンジクにあるという豪華な「宮殿」に関する動画を公開した。
「スケートリンクやカジノ、劇場、ブドウ畑やワイン工場まで備えている施設について、ナワリヌイ氏は約1400億円とされる費用は〝史上最大のワイロ〟で支払われたものだと告発しました」(国際ジャーナリスト)
海外メディアは、プーチン氏が19人乗りのビジネスジェット機「ダッソーファルコン」を含め58機種の航空機、豪華ヨット4隻を所有していると伝えたが、いずれもプーチン氏側は否定している。
愛人らも桁違いの資産家に…
こうした資産の源泉はどこにあるのか。プーチン氏は秘密裏に、エネルギー関連企業の株式を保有しているとされる。
「英紙『ガーディアン』は2010年、アメリカの外交文書の存在を報じた際に、プーチン氏が資産を〝代理人〟を通じて保有していることを示唆しています。プーチン氏の親友として知られるチェロ奏者のセルゲイ・ロルドゥーギン氏や銀行員のユーリ・コバルチュク氏らが、代理人の役割を果たしているとの指摘もある」(同・ジャーナリスト)
16年に流出した「パナマ文書」には、世界の資産家や経営者、芸能人らが課税逃れに使う「タックスヘイブン(租税回避地)」の利用実態が記されていたが、両氏の関係者が関与した疑いのある海外取引の存在も明らかになった。
パナマ文書に続き、昨年10月に公表された「パンドラ文書」によると、プーチン氏の愛人と噂されるスベトラナ・クリバノギク氏の資産は、1億ドル(115億円)に上るとされる。
周辺の人物にこれだけの資産に関する情報があるだけに、プーチン氏本人の資産がどこまで巨額なのか推して知るべしだろう。
13年に離婚したプーチン氏には、前述した愛人をはじめ女性の噂も絶えない。最も有名なのは04年のアテネ五輪で、新体操個人総合金メダリストのアリーナ・カバエワ氏だ。事実婚の相手で、2人の間に子どもがいるという真偽不明の情報もある。
「カバエワ氏は有力紙『イズベスチヤ』や政府系テレビ局などを抱えるメディア・グループのトップを務め、年間10億円以上の収入があるといわれています」(ロシア問題の専門家)
任期は延長…死ぬまで大統領
プーチン氏はソ連国家保安委員会(KGB)の対外情報部員を16年間にわたって務めた後、サンクトペテルブルク市の第一副市長を経て中央政界に進出し、2000年に大統領に就任。ソ連解体で崩壊していた経済を立て直し、強大なロシアを取り戻す路線を強めてきた。
08年にはジョージア(グルジア)に侵攻、14年にはクリミア半島を併合した。そして現在、ウクライナに侵攻中だ。
プーチン氏はロシアに関する歴史書を読みふけり、中でも20世紀前半の哲学者、イワン・イリインに傾倒しているという。亡命先で死亡したイリインの遺体をロシアに戻し、与党や政府高官にイリインの著書を配るなどの入れ込みようだ。
「ロシアのような巨大な国では、民主主義ではなく国家独裁だけが唯一可能な権力のあり方」とする思想は、プーチン氏の現在の行動原理ともいえる。
ロシアの大統領職は連続3選が禁じられていたため、プーチン氏は08年にいったん首相職を務め、12年に大統領の座に返り咲いた。
その後、任期を4年から6年に延長し、憲法改正で現在の任期を終える24年以降も2期12年、プーチン氏が84歳を迎える36年まで大統領を続けることが可能になった。退任後、刑事上や行政上の責任を生涯問われない免責特権も保障されている。
事実上の終身大統領となる可能性が高いプーチン氏には、もはや歯止めが利かなくなっている。
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