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岸田首相“令和の鎖国”に世界中が猛非難…外国人留学生からは怒りの声!

(画像)Den Rozhnovsky / shutterstock

日本の行き過ぎた入国制限はビジネスの現場だけでなく、日本の将来を担う若者世代の国際交流に大きな影を落としている。

「2月17日、岸田文雄首相は新型コロナの水際対策として実施している外国からの新規入国制限を、3月から緩和すると表明しました。ただし、昨年11月まで実施していた1日あたりの入国者数の上限5000人に戻すだけ。現在の3500人からたったの5000人です。これでは与党や経済界からの『鎖国だ!』の声もやまないでしょう。特に日本で学ぶ予定だった世界の外国人留学生たちからはブーイングが一層、強まりそうです」(経済誌ライター)

スウェーデン人留学生のコネーリアさんはコロナ禍で入国できず、今は現地で日本の大学のオンライン授業を受けており、昨年10月にニュース番組『ABEMAヒルズ』でこう訴えた。

「時差があるので昼夜逆転の生活が続き、健康と気分は本当に悪くなってしまった」

コネーリアさんの留学期間は今年の6月までで、たとえ今すぐ来日できたとしても、残された期間はわずかだ。今は他の国への留学も含め、新しい進路を考えているという。

日本政府への抗議の声は世界に広がっている。ツイッター上では日本入国を望む人たちがハッシュタグを付けて思いをつづっており、1月には『ストップ・ジャパンズ・バン(日本の入国規制を止めろ)』という団体が結成された。

すでにドイツのほか、イタリアやスペイン、マレーシアなどでも抗議の声が上がり、これまでに300人超が各国の日本大使館前などで抗議行動を行っている。

初めての緊急事態宣言が発出されたのが2020年4月7日。日本政府は同年の春以降、段階的に入国を制限し始め、全体の95%を占める私費留学生への入国制限が行われてきた。新規入国留学生全体では、19年の約12万人が20年は5万人弱に激減し、21年は11月までわずか1万1639人にとどまった。

昨年の11月5日、留学生やビジネス関係者への新規入国を段階的に認めることが発表された。しかし、それもつかの間、オミクロン株への水際措置強化のため、外国人への新規入国が11月30日から当面の間、停止されることになり、今に至る。20年3月以来ほぼ2年間、日本は事実上の鎖国状態が続いているのだ。

約40万人が来日足止め…

出入国在留管理庁によれば、今年1月4日の時点で、在留資格の事前認定を受けながらも、来日できていない外国人は約40万人だという。7割が技能実習生や留学生だ。中でもその影響が懸念されるのが、日本への留学を望みながらも長期間、海外で足止めされている約15万人の学生たちだ。

国際教育の専門家である一橋大学の太田浩教授は、現在の状況に対して次のように警鐘を鳴らす。

「海外にいる留学生からは『日本は批判の多かったオリンピックをやり遂げたのに、どうして留学生は入国できないのか』との質問を受けるが、私はいつも答えに窮する。

国際教育交流はオンライン授業だけでは成立しないし、留学生の入国停止は将来の日本社会に大きな負の影響を及ぼす。少子高齢化で人手不足が深刻化する中、留学生には卒業後、日本の企業に就職して、日本に定住してもらうことが必要だ。

大学の交換留学生で言えば、海外は受け入れている一方で、日本は停止している。英語圏の大学は交換留学生数の不均衡に敏感で、今は我慢してくれているが、今年秋にも日本の学生の受け入れ中止が起きるかもしれない」

日本の大学で学ぶ留学生は、大学入学前に日本語学校で学ぶ人が6割強といわれる。そういう意味で、日本語学校は留学生の「入り口」であり、現在、鎖国政策の混乱がより顕著になっているのは日本語学校だ。

日本語を学ぶ人は世界に300万人以上いるといわれる。その中で、日本への留学を目指す人は年間約4万人、1%にすぎない。日本にとって貴重な存在の彼らの多くは、何年もかけて留学の準備をしてきた若者たちだ。

彼らは観光で来日する人たちとは質的に全く異なる。大学への留学生同様、将来的に日本の一員あるいはパートナーになる可能性が高い人たちだ。

昨年5月、日本語学校有志と留学関連企業が集まり、任意団体『コロナ禍の日本留学の扉を開く会』が設立され、政府への要望のほか情報収集・発信を中心に活動を始めた。同団体には海外の学生たちから悲痛な声が寄せられている。

「日本に入国するだけのために人生の重要な1年を無駄にしてしまったので、私は不満と失望を感じています…。私の人生とキャリアのすべてがかかっています。私はすでに1年以上待っているのです」(アシシュさん/20歳・ネパール)

「日本に移住するという夢を完全に諦めてしまう可能性が高いです。本当は行きたいのですが、もう1年も無駄にしてしまったので、他のことに目を向けなければなりません」(カリスさん/21歳・イギリス)

“成功体験”に酔う岸田内閣

海外から留学生を受け入れる側である日本語学校は、経営が厳しくなりそうだ。愛知県の日本語学校の新設校で校長兼教務主任を務める高山さん(仮名)は、現在の状況をこう話す。

「もともと昨年10月に開校予定で、そのときの1期生53名が入国停止になった。いまだ1人の来日も実現していない。授業料収入がないのに校舎も寮も空いたままなので、維持費だけがかかっている。今は2期生40名の査証を申請中で、このままだと開校は早くても4月になりそうだ」

当校は入学予定者の母国待機が5カ月目だが、既存校では20年4月から待機している入学予定者もいるという。

「日本を愛し、日本で勉強を頑張りたいという志高き若者が世界中にいることを忘れないでほしい。日本語学校は全寮制が多くコロナ禍であっても隔離は容易だ」

高山さんによれば、日本語教師の中には仕事がなくなり、一時的にパートやアルバイトなどをしながら暮らしている人も少なくないという。高山さんの学校も昨年10月の採用予定者を採用延期にせざるを得なかった。

世界保健機関(WHO)は今年1月19日、感染力が強いオミクロン株が世界中で大流行する中、「国際的な渡航禁止措置に付加的な効果はなく、加盟国の経済的・社会的ストレスの原因となり続けている」と解除または緩和を勧告した。

しかし、岸田内閣は、こうしたWHOの勧告を無視して外国人の新規入国を停止してきた。

なぜ、岸田内閣が鎖国を続けてきたかと言えば、昨年11月に水際対策強化を素早く打ち出し、これが高い支持を集めたからだ。12月頭に実施した読売新聞の世論調査では、前回調査より支持率が6ポイント上昇した。

新規入国停止に対しては、「評価する」が89%に達した。安倍・菅内閣が対策の遅れを指摘されていたことを反面教師にした岸田内閣の〝成功体験〟である。

3月からの新たな入国規制緩和に期待したいところだが、2年にもおよぶ「令和の鎖国」が日本の将来に計り知れないダメージを与えてきたことを、テレビや新聞など大手メディアは世論が怖くて指摘できない。

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