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阪神タイガース“次期&次々期監督候補”を巡って球団OB二分の大抗争!

阪神甲子園球場
阪神甲子園球場 (C)週刊実話Web

今季で就任4年目となる矢野燿大監督の「今季限りで退任発言」で始まったトラ年阪神のお家騒動。焦点は次期監督に移り、阪急電鉄は「岡田・鳥谷」、阪神電鉄は「落合・藤川」への路線延長を主張して、上層部は真っ二つ。しかし、レジェンド・掛布氏が「落合監督」支持に回り、波紋を広げている――。

秋口の風物詩だった阪神の監督去就問題が、今季はキャンプイン前日にいきなり全開だ。

矢野監督が沖縄・恩納村内のチーム宿舎で行った全体ミーティングで「今シーズンをもって監督は退任しようと思っている」と表明し、「優勝して矢野監督を男にしたい」派と「今年1年辛抱すれば新たな道が拓ける」派が混在する異様な事態に。しかし、万年エース候補の藤浪晋太郎が「チャンスとチェンジ」を呼びかけるなど、押し並べて「今季限り発言」を好機と捉えている。

各社のトラ番は、キャンプ取材と並行して本社首脳の取材に躍起だ。ベテラン遊軍記者が「現時点で分かっているのは、次の次の監督に鳥谷敬か藤川球児のどちらかを抜擢する方針を固めたこと」と話し、さらにこう続ける。

「日本ハム・新庄剛志監督、中日・立浪和義監督の現時点での成功を受けて、世代交代が必要だという判断です。まず、どちらかに決め来季から2シーズンで帝王学を授け、監督に昇格させます。問題は、この2年間の監督。矢野監督は自分と考えていたが、親会社である阪急阪神ホールディングスを構成する阪急電鉄は『岡田彰布→鳥谷』、阪神電鉄は『落合博満→藤川』を打ち出しました。両陣営とも次期監督とその次を5年間のセットで考えており、これを知った矢野監督が『話が違う』とブチ切れたのです。ここにすべての疑問が行き着きます」

実は、矢野監督の「今季限り発言」には伏線があった。発言当日の1月31日、阪神は4月1日付の人事異動を緊急発表した。

矢野監督と球団との話し合いは決裂…

キャンプインを前に、矢野監督の後ろ盾だった谷本修球団副社長を阪神電鉄に復帰させ、取締役スポーツ・エンタテインメント事業本部長に就けた。この人事が意味するものこそ、矢野監督の「今季限りでの勇退」なのだ――。

「矢野監督は谷本氏と来季以降の体制について話し合いを続け、2年後に監督交代の球団方針を聞いていたし、賛成もしていた。言葉を換えれば、契約を2年延長するということ。ところが、球団は谷本氏を異動させることで反故にした。矢野監督の怒りが爆発したのは、そのため」(阪神OBの野球解説者)

これで分かったのが、阪急電鉄と阪神電鉄が水面下で進める「次の次の監督」と「指導役の次の監督」問題だ。阪急サイドは観客動員を優先させ、岡田-鳥谷の「早大閥セット」に舵を切ったのだ。

「阪神にとって最大の脅威は、同じ関西を本拠地とするオリックスの実力と人気の急上昇です。しかも、宮内義彦オーナーは今季限りでの退任を表明しており、選手は日本一で花を添えようと一丸になっています。人気を維持するには、親会社に太いパイプを持つ岡田氏と、ロッテ移籍で直近のパ・リーグを経験した鳥谷氏の組み合わせがベストという判断なのでしょう」(阪急電鉄関係者)

一方の阪神電鉄サイドは、落合氏と藤川氏のセットをチョイス。こちらは、有力OBの掛布雅之氏が後押ししているという。

後任監督選出のカギは掛布氏が握っている!?

「本来なら次は外様の落合氏ではなく掛布氏が順当ですが、本人があえて黒子でいいと。矢野監督は就任以来、3位、2位、2位ときっちり期待に応えてはいますが、唯一、拮抗した試合で勝ち抜く力が足りないという評価です。この力を持つ者こそ、リーグ優勝4回の落合氏だと見たのです。ただし、阪神には熱狂的なファンとメディアがいて、〝オレ流采配〟は何かと摩擦を招きやすい。そこで、防波堤役を買って出て連帯を目指しているのです」(阪神電鉄関係者)

掛布氏自身も昨年いっぱいで、阪神電鉄本社内の特別ポストである「ハンシン・レジェンド・テラー」を退任している。矢野監督とは通じるものがあるため、矢野監督が連れてきたコーチたちの身の振り方も考えて、円滑な政権移行を働きかけているという。

もっとも、今季の阪神は絶対的クローザーのR・スアレスと20本塁打を放ったJ・サンズが退団したが、これを補う補強はしておらず、実績に欠けるK・ケラーとA・ウィルカーソンの2投手を獲得したのみ。それでも矢野監督は不満を飲み込み、昨季後半にスタミナ切れを起こした若きスラッガー・佐藤輝明の独り立ちに期待して、ソフトバンク時代に柳田悠岐を育てた藤井康雄氏を一・二軍巡回打撃コーチに招き、自前で強化を図っている。

いち早く退路を断ったことが奏功し、今季日本一になれれば、ファンから「矢野コール」が起きるのは必至。そうなれば、「契約2年延長、その後に3年間の掛布監督」の第3のシナリオも浮上する。

どちらの陣営に軍配が上がっても、今のままでは来季以降は別の監督が就く。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」――。このことわざ通り、追い込まれた流れを享受し、身を引く決意を固めれば、活路を見いだすこともできるだろう。矢野監督のクレバーな決断は、ここにも狙いが透けるのだ。

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