いよいよ中国・北京冬季五輪2022(2月4日~20日)が開幕する。しかし、オミクロン株の世界的まん延が指摘され、中国国内では天津など主要都市のロックダウンが目立つ。北京冬季五輪開催を契機に感染力で群を抜くオミクロン株は猛威を振るわないのか。
公衆衛生が専門の医師で作家の外岡立人氏が言う。
「日本では、オミクロン株による感染拡大が続いています。それなのにワクチンの3回目接種がさっぱり進んでいない。首相官邸のホームページによると、首相自身、『全然進んでいないじゃないか。もっと加速できないのか』と声を荒げることもあったようです。こんなやり取りがあったのは、ちょうど首都圏など1都12県に『まん延防止等重点措置』を適用する方針を決めた頃です。これで察しがつくと思います。オミクロン株による第6波の発生は、岸田政権によるワクチン接種の遅れが原因です」
感染爆発とワクチン接種に因果関係があるならば、中国のワクチン接種率が気になる。中国では1月27日時点でワクチン接種率は約84%。これは韓国に次いで世界2位の高さである。
「1月4日以降、中国に到着した選手や関係者、報道陣など約3000人のうち、106人の陽性が確認されています。大会は外部との接触が遮断された安全圏内で行われる。しかも、閉ざされた空間の外も、より厳しい制限が設けられ、ロックダウン状態です。例えば、北京の豊台区では地元で感染した患者が数人確認されたため、住民約200万人にウイルス検査が命じられたほどです。『感染ゼロではなく、感染拡大ゼロ』をスローガンに当局は北京冬季五輪開幕から閉幕まで徹底した対策を講じる手筈です」(現地マスコミ関係者)
感染力が従来の2倍ともいわれる亜種…
感染拡大防止対策に穴はないのか。
「北京に隣接する天津市でオミクロン株による2名の新規感染が確認されたのは、1月8日早朝です。いずれも、海外渡航歴はなく中国国内での感染とみられました。同日、この2人以外に18人の新規感染者も確認された。その後、河南省の安陽では、天津に訪問歴のある大学生がオミクロン株に感染していたことが分かった。この大学生が安陽に戻って来たのは、前年の12月28日。つまり、当局が移動制限などの措置を講じる前に、感染者が自由に移動できていたのです。こうした穴が厳戒態勢の北京にもあり、五輪大会関係者や選手団の中に陽性者がいないとは言い切れない」(同・関係者)
北京冬季五輪は中国共産党の威信と国力を全世界に示す絶好の機会である。
「どんなことがあっても、コロナを抑えるでしょう」(前出・外岡氏)
そんな折も折、感染力が従来のオミクロン株の2倍ともいわれる、オミクロン亜種の新種が見つかった。
「ヨーロッパでは一部の科学者から『ステルス・オミクロン』とも呼ばれている新たな変異型です。感染力は間違いなくオミクロンの従来株より強い。毒性などその他の特性はまだ分かっていません。しかし、イギリスなどの対策を見ていると、7日間平均で1日6万人あまりの新規感染者が出ていますが、ブースター接種も進んでいることなどから、イギリス政府は公共交通機関や店舗でのマスク着用義務などの規制をほぼ撤廃しました。オミクロン株の毒性は感冒(かぜ)程度ではないでしょうか。諸外国で規制を緩めているのはそのためです」(同)
3回目の接種は対象人数のたった21%…
デンマークも規制を2月1日から全面解除した。しかし、ブースターワクチン接種が一向に進まず、オミクロン株による第6波を許してしまった日本は、例によってテレビ情報番組が感染者数の多さを煽り、専門家が似たようなコメントを繰り返すだけ。政府にしても、しかとした対策は示せないでいるのである。
実際、3回目の接種は1月末までに約1470万人が対象となっているが、内閣官房によると、接種を終えたのは1月27日時点で、全国で約316万人。接種率は約21%にとどまっていることが判明した。専門家は「これでは今の第6波を抑えることは期待できない」と指摘している。
最後に外岡氏が基本的な感染防止対策を語る。
「マスクを着けて呼吸ができているということは、マスクを通して外との空気が出入りしているんです。つまり、マスクを着けて咳、くしゃみ、大声で会話をすることで、目に見えないエアロゾル粒子に混ざってウイルスが飛散するということ。マスクと肌の間の隙間を通して多くの飛沫がジェット気流に乗り、エアロゾル化して空中に漂う。それがオミクロン感染の中心なのです。念のため言っておきます。咳、くしゃみをするときはマスクの上からハンカチで押さえることが重要です」
ステルス株まで出現しただけに、北京冬季五輪への影響は計り知れない。
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