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炎上するのは漫才の腕がないから!〜島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

島田洋七
島田洋七 (C)週刊実話Web

テレビでは年末年始、特番などで漫才を披露する番組が増えますね。

俺は、漫才は最前線の笑いだと思っているんです。だって、ツカミに時事ネタなんかを入れやすいでしょ。たとえば、新型コロナウイルスの感染者が減ってきた昨年11月、久々に講演会の仕事があったんです。俺の出身地である広島で、お客さんは主に65歳以上の方々。

ツカミは何にしようかなと考えて、やはりマスクだろうと。そこで「お客さん全員マスクをして日本人は真面目ですね。マスクをしていると誰が美人かそうじゃないか分からないですもんね」と言ったら、会場は大爆笑。「今日はマスクで助かっている人が全員だと思います」と続け、またも場内は沸きましたね。

講演会や舞台と違って、最近のテレビのネタ番組を見て残念だなと思うことが1つだけあるんです。特に若手だと持ち時間が1分半くらいしかないことです。しかも、30組くらい出演する。若手でまだまだ経験が浅いのに、持ち時間が短いとなると、面白いネタなんて作れないですよ。

本来なら1組に6~7分くらいの持ち時間を与えて、出演者を少なくしたほうが、面白いネタも作れると思いますね。1分そこそこのネタばかりだと、YouTubeなどを見せられているのかなと錯覚してしまう。俺らは30分でも40分でも漫才できますけど、テレビでネタを披露するなら最低でも8~10分は欲しいですね。

技術がないと“考える隙”を与えてしまう

新型コロナが流行る前、ナイツが司会を務める『お笑い演芸館VS.』(BS朝日)というネタ番組に出演したことがあるんです。そうしたら「師匠、ネタの時間は15分超えてもOKです。あとはこちらで編集します」とプロデューサーに言われました。朝日放送の方で、お笑いのことをよく分かっている人だったんですよ。

結局、俺らは30分くらい漫才をしました。ただ、漫才の編集は難しいんです。よほど笑いのことを理解していないと、ネタのフリなしで、オチだけ放送しても面白くないでしょ。実際に放送された番組を見たら、俺らの漫才を損なわないようにきっちり編集されていましたね。

テレビ放送が開始されて、もう60年以上経つでしょ。新しい企画自体を立てることが難しいのも時代の変化かもしれませんね。それに新型コロナが流行ってからは、漫才コンビの間にもアクリル板が備え付けられて、相方の体にさえ、なかなか触れない状況が続いていますから。

ましてや、ここ数年はちょっとでも変なことを口にすれば、ネット上で炎上する。だから笑わせるための多少、失礼な物言いが許されない。

本来は多少、失礼な物言いを漫才でしても本当に面白いネタならお客さんや視聴者はそういう言葉にすら気が付かないんですよ。テンポよくバンバンウケると、言葉1つ1つにいちいち反応しないし、覚えてもいない。だから余計なことを考える前にネタは終わってしまう。そういう技術がないと、見ている方に「おもろないな」「こんなことを言ったらダメだろ」などと考える隙を与えてしまうんです。

技術がある面白い漫才師なら、多少きついことを言っても良いと俺は思っていますね。

島田洋七
1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。

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