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岸田政権にイバラの道…北京五輪「外交ボイコット」決断で命取り!

岸田文雄
岸田文雄 (C)週刊実話Web

岸田政権が米中との股裂き状態にもがいている。

来年の中国・北京冬季五輪に向け、米国の「人権非難」に同調し政府関係者や閣僚を派遣しない外交的ボイコットを迫られているためだ。

政府関係者が岸田政権の難しい立場を解説する。

「北京五輪は来年2月4日に開会式、同20日に閉会式が行われる。その祭典に暗雲がかかったのは米国のバイデン政権が五輪に政府関係者や閣僚を派遣しない『外交的ボイコット』論を掲げたため。中国国内の新疆ウイグル自治区で大量虐殺や人権弾圧が起きている可能性が高く、見逃すことはできないというのが表向きの理由です」

バイデン政権が対中強硬姿勢に転じた裏の事情について、外務省関係者がこう明かす。

「米同時テロが起きた2001年当時、米国はアフガニスタンを支配していたタリバン勢力をテロの温床として一掃し、新政権を樹立させた。それから20年、タリバンとの戦闘は続き、米国は約220兆円という莫大な戦費と2000人を超す米兵の命を失ったのです」

トランプ前大統領はタリバンと交渉の末、アフガン撤退を決める。ところが、バイデン政権は撤退時、タリバンに再び全土の武力制圧を許してしまった。さらに、欧米に協力した数万人のアフガン人が国外逃避を望む中、その多くが取り残され大混乱に陥った。そんな不手際を演じたバイデン政権に米国民や欧州から猛批判が起きた。かくして、バイデン政権の支持率は急降下したのだ。

「このままでは来年の中間選挙で大敗し、3年後の大統領選も危うい。そのためバイデンは人気取りのため、人権を盾に対中強硬策、五輪の外交的ボイコットで巻き返しに出たのです」(同)

行動いかんによっては岸田おろしに発展か…

米国には英国、カナダ、豪州と支持表明が相次いだ。これに対し中国はどう動いたか。

「中国は新彊ウイグルの大量虐殺について『世紀の嘘とデマに基づいて北京冬季五輪を妨害しようとしている』と猛反発し、対抗措置を取る姿勢です」(同)

米国と同盟関係にある日本の岸田政権も対応を迫られている。

「日米安保や尖閣問題を抱え、米国の核の傘の下で平和を保つ日本は外交的ボイコットに同調しなければ、いずれ見捨てられる。タカ派の安倍晋三元首相や高市早苗政調会長らは『早期の外交的ボイコットを』と声を上げている。岸田政権が米国と歩調を合わせるのは当然だ」(自民党幹部)

また、自民党内保守派の議員からは、こんな物騒な発言も飛び出している。

「日米の絆にくさびを打ち込む行動を取れば即、岸田おろしに発展するだろう」

一方、JOC(日本オリンピック委員会)関係者は外交的ボイコットに否定的。

「今年、日本は東京五輪を開催し、何とかやり切れた。コロナの感染拡大で絶望的になりかけた5月頃、『東京五輪開催を支持する』と明言し、流れを変えてくれたのは習近平国家主席だ」

習政権が東京五輪を支援したのは言葉だけではない。開会式には閣僚級の苟仲文・国家体育総局長を出席させ、スポーツ外交の一線を守った。これを念頭に中国外務省の趙立堅報道官は「中国は東京五輪開催を全力で支持した。日本は基本的な信義を持つべきだ」とけん制している。

日米関係重視で計り知れない経済的損失…

経団連関係者も米国追随主義には懐疑的だ。

「政府の貿易統計によれば、20年の日本の輸出相手国のトップは中国で、輸出全体の22%を占めている。金額にして15兆円。輸入も26%の約17兆5000億円でトップ。つまり、中国が日本最大の輸出入相手国で、中国から見ても日本は屈指の貿易相手国。日中は切っても切れない間柄だ。メンツのため、関係を悪化させるのは得策ではない」

それでも、岸田政権が日米関係を重んじた行動を取った場合、経済的損失は計り知れない。

「スマートフォン製造や次世代自動車、省エネ家電など未来技術に不可欠なレアアースは中国が世界の7割を占め、日本の中国依存度も6割だ。2010年前後、中国と尖閣紛争をめぐり対立が激しくなった際、中国は日本に対するレアアース輸出制限、日本製品不買運動、日本観光禁止措置など徹底的に規制した。習主席が威信を懸けている北京五輪を日本が外交的ボイコットしたなら、再びレアアース輸出制限などの嫌がらせをエスカレートさせる可能性は極めて高い」(大手IT企業幹部)

仮に米国に追随しなければ、日本は欧米から手痛いシッペ返しを喰らう。まさに板挟みだ。

「2024年パリ五輪を控える仏は米英らと一線を画し、外交的ボイコットをしない方針で、日本もそうすべきだ。岸田政権内では室伏広治スポーツ庁長官か東京五輪大会組織委員会の橋本聖子会長を派遣する案もあるが、中国は東京五輪に閣僚級を派遣した。日本で同格にあたるのは文科相などの閣僚だ。岸田首相は難しい選択を迫られている」(政治担当記者)

来年は日中国交正常化50周年の節目の年だ。進むも地獄、退くも地獄。岸田政権はどちらを選んでもイバラの道だ。

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