『パーフェクト・ケア』
監督/J・ブレイクソン
出演/ロザムンド・パイク、ピーター・ディンクレイジ、エイザ・ゴンザレス、ダイアン・ウィースト
配給/KADOKAWA
この時期は本当に素敵な作品が多い。やっぱり芸術の秋、そして映画の秋だからでしょうか。もちろん年末は家族向けのハッピーな大作もありますが、私としては、どうしてもミニシアター系を応援したくなる。物語に込められたメッセージが深く、映画館から出てもまだ、作品が自分の中で生き続けるものが多いから。
この『パーフェクト・ケア』は大いに興奮しました。原題は『アイ・ケア・ア・ロット』。つまり〝私は気に掛けてますよ〟。高齢者の成年後見人として働くマーラ・グレイソンの仕事は完璧。スタイルもよく、ルックスやファッションも文句なし。かなり大変なお仕事なので、多少冷めた目つきは想定範囲内…と思ったら、このマーラはとんでもない女だった。
なんと、お金持ちで家族のいない人を狙っては、財産を自分のものにする。本来ならば、相手が安心&安全に暮らせるようにサポートするのが仕事。でも、マーラは強引に相手を施設に入れては、持ち物をすべて売り払う。そして何が怖いって、まさかと思うほどの考え抜かれた詐欺! 見ているこちら側としては、見事に裏切られた思いと同時に、興味をそそられ見入ってしまいます。
まさかのラストに思わず雄叫び!
そんなある日、マーラが独り身の老女とコンタクトを取り、施設に入れます。ところが、ここから怒涛の急展開で最高に面白い! なぜなら、このオバサンを狙ってたのはマーラだけではなかったから。どちらも強い! いや、みんな強い! そして、まさかのラスト!?…と思いきや、〝あーやっぱりね!〟と雄叫びを上げちゃいました。
この作品の何が最高かって、やっぱりマーラを演じるロザムンド・パイクですよ。2002年『007 ダイ・アナザー・デイ』の時は、〝だいぶ冷たい雰囲気のボンドウーマンを選んだわね〟と思いましたが、その12年後に彼女が出演した『ゴーン・ガール』では、その冷たさがピッタリとマッチしていて、彼女以外には配役が考えられなかった。そして今回、あまりのハマり役に、また大興奮。
とにかく目がヤバイ! 獲物を狙う彼女は、その先のお金しか考えてない雰囲気を見事に醸し出してます。さらに、髪型がボブの〝仕事できます感〟、煙草の煙を吐き出す時のミステリアスなオーラもたまりません! 成功とお金しか頭にない1人の女性の生き方は、見ていて面白くないわけがない! 自分が年を取ったら、誰に面倒を見てもらうのか、冷静に考えてしまいました。
LiLiCo
映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。
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