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『盗撮をやめられない男たち』著者:斉藤章佳〜話題の1冊☆著者インタビュー

『盗撮をやめられない男たち』著者:斉藤章佳/扶桑社

『盗撮をやめられない男たち』扶桑社/1760円

斉藤章佳(さいとう・あきよし)
精神保健福祉士・社会福祉士・大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などさまざまな依存症問題に携わる。

――斉藤先生は20年以上にわたり依存症治療に携わってきました。〝盗撮〟を繰り返す加害者は、どんなタイプが多いのでしょうか?

斉藤 ニュース報道では、警察官等の公務員や大企業に勤務している人ばかりが取り上げられますが、実際は四大卒の普通の会社員で、妻子がいる人がほとんどです。

彼らは決して特殊な性癖の持ち主というわけではなく、盗撮を軽視しながら軽い気持ちで始めて、気がついたら常習化しています。盗撮は彼らにとってローリスク・ハイリターンな犯罪で、行為前の緊張感と行為達成後の緊張の緩和がストレス発散に繋がるため、犯罪だと分かっていてもやがて止められなくなります。

――実際に加害者は、どのような手口で犯行に及んでいるのでしょうか?

斉藤 盗撮加害者の約8割が〝スマートフォン〟で、そのうちの9割がカメラの〝無音アプリ〟を使用しています。場所はトイレ、更衣室などもありますが、圧倒的に多いのは駅構内のホームや階段、エスカレーター、電車内です。目の前にスカートを穿いた女性がいると、「盗撮くらい大したことない」と考えながらスマホをかざし盗撮してしまうのです。実際に周囲の人が気づいて、捕まるケースもあります。

盗撮は依存症もある習癖性の高い行為

その後は警察に連行され取り調べを受けますが、当事者同士で示談が成立すれば、前科もつかなければ裁判になることもありません。さらに、勤務先や家族にもバレることはなく、数十万円の罰金刑で済むため、一時的に反省はするものの、またしばらくすると犯行を繰り返してしまうのです。

――加害者家族も苦悩を抱えているといいますね。

斉藤 皆さん最初はかなり驚かれて、「何かの間違いじゃないか」と否定するのですが、カメラに残っている盗撮画像を確認すると、ガックリと肩を落とします。もっとも最近は、盗撮は単なる特殊性癖ではなく、〝依存症〟の特徴を併せ持つ習癖性の高い行為であることが認知されつつあります。治療へとつながった後は、積極的に取り組むケースが多いですね。

――実際にどんな治療を行うのですか?

斉藤 〝認知行動療法〟が効果的な治療法の1つです。詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、まずはハイリスク状況を把握、犯行に及ぶ引き金を特定し、自身が正当化している「認知の歪み」を洗い出して修正していきます。家族の誰かが逮捕されれば家族も困ります。依存症治療は本人が来なくてもOKです。まずは一度、家族がご相談ください。

(聞き手/程原ケン)

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