世界的な半導体不足で、車からテレビゲームまで、ありとあらゆる製造業がダメージを被っている中、半導体の受託生産で世界最大手の台湾企業TSMCが、日本に新しい工場を建設することを11月9日に正式発表した。
「建設予定地は熊本県。ソニーグループで半導体製造を担っている小会社『ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング』の本社がある同県菊池郡菊陽町に誘致されました。工場の建設には、場所を提供するソニーグループのほか、デンソーも参加するというビッグプロジェクトです」(経済ジャーナリスト)
TSMCの新工場建設は、地元熊本では好意的に受け止められ、雇用拡大も期待されている。一方、心配事もあるという。
「今回の誘致成功の背景には、米中摩擦の影響による〝地政学的な要因〟もあるとはいえ、数年にわたる地道な〝草の根活動〟が続けられた成果も大きい。これほどのビッグプロジェクトですから、当然、地元選出の国会議員などにも多大な尽力をいただいているわけですが、先日の衆院選挙で〝大番狂わせ〟が起こってしまい、新工場建設にも影響が出るのではないかと懸念されているのです」(地元関係者)
「定年制」を導入すると世襲が増える
この関係者が言う〝大番狂わせ〟とは、解散前には現役議員最多の16回の当選を誇った野田毅氏の落選を指す。
「野田氏が多選の上に80歳という高齢だったため、世代交代を求める声が高まり、熊本2区は保守分裂の選挙となりました。結果、43歳という若手の西野太亮氏が当選。石原伸晃元幹事長や、小選挙区で落選して比例復活した甘利明前幹事長らとともに、今回の総選挙を象徴する大物の〝落選劇〟と言えます」(政治記者)
野田氏が携わっていた〝案件〟は幅広く、影響も大きいようだ。
「国や県のみならず、各自治体の実務担当者まで、てんやわんや状態だと聞いています。正式に後継指名をされた人が当選していれば、案件の引き継ぎはスムーズに進んだのでしょうが、これだけ遺恨を残す形となった選挙結果ですからね。ことは、そう簡単には進みませんよ…」(前出・関係者)
人生100年時代、「適度な世代交代」の必要性の声が高まる一方で、「長く仕事することを希望する高齢者」の権利も無視できない。
「自民党内でも〝定年制〟については賛否両論があり、常々議論されている。熊本のような混乱を招かないためにも、ある程度の年齢で線引きは必要になってくるはずです」(前出・政治記者)
しかし、〝定年制〟が導入されれば、「早いうちから影響力を残そうとするあまり、今以上に世襲議員ばかりになる」(別の政治記者)という懸念もある。なんとも悩ましい問題だ。
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