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北朝鮮・金正恩総書記が恐れる韓国との「新型ミサイル」軍備競争

(画像) Marian Weyo / shutterstock

北朝鮮は10月19日、日本海に向け2発の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。

金正恩総書記は9月にも4種類、計5発のミサイルを発射し、ここに来て軍事活動を活発化させているが、自国の核・ミサイル開発について、「米韓と戦争するためではなく、あくまでも自衛」と詭弁を弄することをやめない。

「磯崎仁彦官房副長官は、北朝鮮が19日に発射したSLBM2発のうち1発について、新型で固体燃料推進方式とみているとした上で、洋上の潜水艦から発射したと推定しています」(軍事アナリスト)

また、朝鮮中央通信(KCNA)は、北朝鮮が9月28日に発射した極超音速滑空ミサイル『火星8』について、「初めてミサイルにアンプル化された燃料が導入された」と報じている。

「アンプル化された燃料を使うミサイルは、燃料の注入が必要な従来型のミサイルに比べ、発射までの準備時間が短く、固体燃料ミサイルと同程度の短時間内に発射が可能になる。これは先制攻撃を意図する国を無力化することを意味し、北朝鮮にとっては大きな一歩、日本にとっては大きな脅威と言えます」(同)

これに先駆け9月7日には、韓国メディアが「韓国軍がSLBMの水中発射実験に成功し、実戦配備が間近になった」と報道し、日本を驚かせた。潜水中の潜水艦から弾道ミサイルを発射することは、技術的に容易ではなく、これまでに成功しているのは米国、ロシア、英国、フランス、インド、中国と〝自称〟の北朝鮮を含めて7カ国しかない。

そのため、各国の軍事専門家らは韓国の発表に疑惑の眼差しを向けていたが、同15日になって文在寅大統領の立ち会いのもと、発射実験に成功したという証拠写真が公開された。

北朝鮮の焦燥が透けて見える…

「北朝鮮の国防科学院は、韓国のSLBMを『自慢用でしかない出来損ないの兵器』と酷評しましたが、北朝鮮はSLBMを持ちながら、それを搭載する潜水艦の開発が進んでいない。この発言には、北朝鮮の焦燥が透けて見えます」(北朝鮮ウオッチャー)

韓国は10月21日にも、模擬人工衛星を搭載した初の純国産宇宙ロケット『ヌリ号』を打ち上げ、軌道投入には失敗したものの、文氏は「立派な成果だ」と胸を張った。もちろん、パフォーマンスのみに終始する正恩氏は、韓国のロケット打ち上げを苦々しく思っているに違いない。

北朝鮮は韓国と米国に向けて、二重基準(韓国のミサイルは抑止力で、北朝鮮のそれは挑発・威嚇行為と断定すること)の撤回を主張しており、今回の『ヌリ号』についても「ロケット技術を長距離ミサイルに転用する可能性がある」と非難している。

韓国の2022年における国防予算案は55兆2277ウォン(約5兆2152億円)で、日本の22年度防衛予算の概算要求額5兆4797億円に迫る勢いだ。軍備拡張を続けてきた韓国は、国防中期計画に軽空母の建造と潜水艦の増強計画を盛り込み、原子力潜水艦の保有も示唆している。

「北朝鮮は10月11日から、平壌で国防発展展覧会『自衛2021』を開催しました。その目的は、国威発揚と海外への売り込みですが、バイヤーがいない展覧会を開くのは異例です。経済制裁や新型コロナに対する防疫措置の影響で、国家経済発展5カ年計画の遂行が難航している中、正恩氏がすがれるものは軍事部門しかありません」(国際ジャーナリスト)

米国のインド太平洋戦略は“日本抜き”で展開!?

『自衛2021』の様子を放映した朝鮮中央テレビの映像を見ると、正恩氏は黒いサンダルを履いている。以前から指摘されている痛風が悪化し、普通の靴が履けないのだろう。

「他人に対して攻撃的な性格を有する正恩氏が、そのストレスによる暴飲暴食で痛風になった可能性が高い。韓国に後れを取った正恩氏の焦りが、体調にも現れているのでしょう」(同)

南北朝鮮の軍備競争が過熱する中、日本ものんびりとミサイル試射を眺めている場合ではない。

「韓国がSLBM発射の写真を公開した9月15日、米英がオーストラリアに原子力潜水艦技術を提供するというニュースが流れました。現在の海上自衛隊には、SLBMもなければ原潜もなく、将来的に持つ計画すらありません。しかも、日本はSLBMや原潜を持ちたいと、米国に持ちかけたこともない。平和憲法を理由に、自国の防衛に極めて消極的な国だからです」(同)

韓国はSLBMを秘密裏に開発していたが、米韓軍事同盟上、米国が知らないわけがない。つまり、米国のインド太平洋戦略は、日本を抜きにして展開し始めたことになる。

バイデン米大統領はアフガニスタン撤退に際して、「アフガン国軍が戦う気のない戦争で、米兵が戦死することはない」と明言している。同じように米国は、北朝鮮から自国を守る気概のある韓国と、その気のない日本を公然と区別しているのである。

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