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マサ斎藤「目ん玉くり抜いてよく見てください」~一度は使ってみたい“プロレスの言霊”

マサ斎藤
マサ斎藤 (C)週刊実話Web

センスに富んだ迫力あるコメントによって闘いのストーリーをつむぎ、興行を盛り上げることは、プロレスラーとして技量の見せどころでもある。

とはいえ、目まぐるしく変わる状況の中で、珍言が発生するケースは後を絶たない。

プロレスにおいて、かなり重要になるのが「言葉の力」だろう。80年代、黄金期の新日本プロレスにしても「過激なプロレス」「ストロングスタイル」などのキャッチフレーズがファンの心をつかみ、それによって全日本プロレスを人気で凌駕していった部分は確かにあった。

レスラー個人にしても試合を盛り上げるために、マイクパフォーマンスやリング外でのコメントは重要である。

長州力と藤波辰巳(現・辰爾)の「名勝負数え唄」においても、くすぶっていた長州が主役級に躍り出るまでには、「かませ犬」「下剋上」などのフレーズが大きな役割を果たしている。

逆に、言葉使いが巧みだからこそ、トップに立てるといった部分もあるだろう。

ジャイアント馬場のように圧倒的な存在感があれば、さすがに「言葉は不要」となるが、それはごく一部の選ばれたレスラーだけのこと。新日道場で圧倒的な強さを誇っていた藤原喜明も、「テロリスト」や「関節技の鬼」などの呼び名が付く前は、アピール不足のため前座に甘んじていた。

ただ、いくらワードセンスに優れていても、多くのレスラーはいわゆる体育会系育ちであり、読書の習慣などはほとんどない。そのため、正直なところ基本的な国語力、計算力に難のある選手も少なくない。

プロレスファン以外にも広く知られることに

有名なところでは小島聡が、天山広吉とのタッグについて「俺たちは1+1で200だ! 10倍だぞ10倍!」と発した一件が挙げられよう。

1999年3月5日、後楽園ホール大会。当時のIWGPタッグ王者でnWo軍だった小島が、パートナーの天山、ヒロ斎藤と組んで臨んだ新日正規軍との6人タッグ戦。

「10倍だぞ~」はその試合後のコメントで、プロレス専門誌にそのまま掲載されると、それが雑誌『宝島』の読者投稿コーナーで取り上げられ、さらにはネットを介して拡散されたために、今ではプロレスファン以外にも広く知られることになってしまった。

もちろん、正解は10倍ではなく100倍である。本気で間違えたというよりは、何も考えずに勢いで口にしたセリフだろうから、小島自身の問題というよりも、間違いをそのまま雑誌に掲載した記者にもかなりの責任がありそうだ。なお、この件については後年に小島自身が、ブログで「計算違い」を認めている。

数字の間違いではマシン軍団のマネジャー、将軍KY若松の「おまえ(アントニオ猪木)を倒すのに3分もいらない! 5分で十分だ!」「(試合を)5分延長させろ! テンミニッツだ!」(正解はファイブミニッツ)などもあった。

マサ斎藤も現役時代はいかにもヒールらしい発言や、座右の銘「ゴー・フォー・ブローク(当たって砕けろ)」などセンスのあるところを見せていた。

単純な知識不足や学力不足ではなかった!?

しかし、テレビ解説者を務めるようになってからは「nWoの狙いは世界平和です」(世界制覇の言い間違い)、「スタイナーズは日本人離れしています」(そりゃあ外国人ですし)、「ここはよく目ん玉くり抜いて見てください」(目ん玉見開いて、でしょうか?)などの発言で、お茶の間をにぎわせた。

明治大学の出身で、実は裕福な家庭に育ち、子どもの頃には家庭教師もついていたというマサだけに、単純な知識不足や学力不足ではなかったはず。20代半ばにアメリカへ渡り、現地での生活が長かったことで、いくらか日本語がおぼつかなくなっていたのかもしれない。

なお、マサはアメリカで腕自慢の素人と賞金マッチを闘った際、手強い相手に対しては本当に目ん玉に指を突っ込んで、勝利を収めたこともあるというから、「目ん玉くり抜いて」のフレーズが決して現実離れしていなかったりもする。

万が一、素人相手に負けたのでは、明日からリングに上げてもらえなくなるだけに、目つぶしの非情手段もやむを得なかったようだ。

話を「言い間違い」に戻すと、猪木の場合はダジャレを駆使することが多いだけに、言い間違いなのか冗談なのか判別しかねることが多いのだが、そんな中でも明らかに間違えていたことがある。

ノーコンテストに終わった試合後に、マイクで「今日のところは見殺しにしておいてやる!」(正しくは「見逃しておいてやる」)と叫んだことがあった。

《文・脇本深八》

マサ斎藤
PROFILE●1942年8月7日生まれ~2018年7月14日没。東京都中野区出身。身長180センチ、体重120キロ。得意技/捻り式バックドロップ、監獄固め。

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