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ポツンと取り残された前代未聞のロケ~原田龍二の『不思議な世界』

原田龍二
原田龍二 (C)週刊実話Web

前回の続きです。『日立 世界ふしぎ発見!』(TBS系)でムラブリ族の集落にたどり着き、近くで一泊した我々ロケチーム。翌日、彼らが出かける様子を見せたので、付いて行くことに。

ジャングルを何時間か歩くと、川に到着しました。川に入った彼らは水をバシャバシャさせて、突然動きを止めます。すると川面がぶくぶくと泡だらけになり、失神した魚が次々に浮いてきました。彼らは、川の中で葉っぱを踏み続けていたのです。この葉にどうやら麻酔作用がある模様。その魚を集めて集落に持ち帰り、焼いて食べました。そこで僕はやっと、ご相伴にあずかりました(笑)。

2日目、彼らの動きが激しくなります。1人消え、2人消え…戻ってきません。僕は「狩りにでも行ったのかな」とのんきに構えていたのですが、誰もいなくなって1時間、ディレクターが、「戻ってこないんじゃない?」と言い出しました。さらにキャメラマンが、「屋根代わりにしていた葉が黄色くなってるね」と言うのです。僕はふと、彼らが「ピートンルアン(黄色い葉の精霊)」と呼ばれてることを思い出しました。葉が黄色くなると移動するから、そう名付けられたのか…。最後は僕ひとりがぽつんと取り残される、そんな前代未聞のロケでした(笑)。

ビリビリに漂う緊張感…

もう一つ訪ねたリス族は、〝ゴールデン・トライアングル〟と言われる魔境に住んでいます。タイとミャンマーとラオスの国境なのですが、アヘンの原材料となるケシ畑が広がっていて、アヘンを製造する工場があると言われています。つまり、無法地帯なのです。このエリアに入るには〝政府から遣わされた武器所持者を同行しなければいけない〟という規定があります。道中でゲリラと遭遇した場合、身ぐるみ剥がされて命を奪われる可能性だってあるわけです。そんな危険が巻き起こりそうな道を、キャラバンで何時間もかけて通ります。見た目にはのどかな場所ですが、緊張感はビリビリに漂っていました。

標高の高いところに住むリス族にとって、アヘンは万能薬でした。頭痛・腹痛・歯痛など、いろんな症状に効くので、作って服用しているとのこと。単純に、生活のために製造しているのです。彼らとの出会いもまた、貴重な経験でした。

これらの旅のテーマは「自由」。住所を持たない、自由な人々と会うロケです。ピートンルアンとのお別れはあまりにも自由すぎて、お別れの一言すら言えませんでした。感動も何もない状況でしたが(笑)。でもそこで、彼らの生活スタイルなどが浮き彫りになります。親切に部外者へ対応するのもおもてなしですが、彼らのように何もごまかさず、ありのままを見せてくれるのも、一つの礼儀だと思います。ムラブリ族が最初に放った拒絶のオーラは強烈でしたが、思い出してみると嫌なことをされたことは一度もなかったな、そう感じる旅でした。

原田龍二
1970年生まれ。ドラマやバラエティーで活躍する一方、芸能界きってのミステリー好きとして知られ、近著に『ミステリーチェイサー原田龍二の謎のいきものUMA大図鑑』がある。現在、『バラいろダンディ』(MX)で金曜MCを担当。YouTubeチャンネル『ニンゲンTV』を配信中。

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