松原タニシ(まつばら・たにし)
1982年4月28日、兵庫県神戸市生まれ。松竹芸能所属のピン芸人。現在は「事故物件住みます芸人」として活動。これまで大阪、千葉、東京、沖縄など13軒の事故物件に住む。著書に『事故物件怪談 恐い間取り』シリーズ、『異界探訪記 恐い旅』がある。
――触れば即死するという〝たたり石〟で百物語を敢行するなど、新刊『死る旅』もすごい旅でした。旅を終えた感想は?
タニシ まだまだだなと思います(笑)
――事故物件よりもさらに死に近い、自殺スポットやたたり伝説の地、戦跡や被災地、直葬や遺体管理の現場へ訪れた理由は?
タニシ 事故物件や心霊、自殺スポットって、みんな興味を持つのでウケがいいんです。でもウケるためだけにやっているのはイヤで、自分の中で消化できていないのにアウトプットすることにずっと違和感があったんですね。事故物件も幽霊も、「死ぬ」ということについてちゃんと考えておかないと語ることができないと思っていたので「死」をテーマにした本になりました。
――ストレートな怪談集ではありませんが、多くの方に読まれています。その理由はどこにあると思いますか?
タニシ オカルトとか心霊とか怪談は、なんとなく「うそやろ?」と思いながらも、その気持ちをごまかして「怖いな」って思う楽しみ方があると思うんです。でも、そうやってごまかすことになんかモヤモヤしている人は、本書を読んでちょっとスッキリしたんじゃないでしょうか。
本当の意味の「死ぬ」ということ
そういう意味で、オカルト好きな人もそうでない人も、共感してくれているのかもしれません。そのモヤモヤがずっと残ったまま生き続けなくてはいけないのが、本当の意味の「死ぬ」ってことだと思うんです。「どうせ死ぬし」とか「コロナで未来が不安だし」とか、みんな心のどこかに「何をやっても虚しい」という気持ちがあるんじゃないでしょうか。不安だから将来のことを考えるのを避けている人も、多いのかなと感じます。
でもこの本を読んで、読者のみなさんも将来のことや、いつか自分にも必ずやって来る「死」について考えてもらえたらうれしいですね。
――タニシさん自身はどんなふうに死にたいですか?
タニシ きちんと準備をして死にたいですね。たまってる物や途中の作業を、すべて吐き出してから死ねたらいいです。何も残したくない、お墓もいらないくらいです。
――事故物件で同居している数々の怪異を起こしてきた〝いわくつき〟の人形たち…みゆきちゃんや菊姫などはどうするんですか?
タニシ 誰かほしい人、いわくつきのものを集めている人にもらってもらいたいですね。僕の棺に一緒に入れてもらいたいとは全然思いません(笑)
(聞き手/程原ケン)
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