2月22日、メルセデスベンツのオラ・ケレニウスCEOが、2030年としてきた全車種EV(電気自動車)化の目標を見直し、内燃機関モデルの開発継続を明らかにした。
EVの需要が予想を大きく下回る状況が続いているからだ。
EVの低迷は、メルセデスベンツに限らない。
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アメリカではフォードやGMのEV在庫が、販売不振の影響から積み上がっている。
テスラのEV販売はトヨタのHV(ハイブリッド車)に抜かれ、昨年10~12月期決算の営業利益が、前年同期比で47%も減少している。販売不振から値下げを余儀なくされたからだ。
また、アップル社は10年にわたり数十億ドルを投じて開発を進めてきた自動運転型のEV開発を中止する方針を固めた。
EVを急増させた中国でも、中古価格が暴落するという影響が鮮明になっている。
日本も、菅義偉政権の時代に2035年までに新車をすべて脱エンジン化する方針を打ち出し、東京都の小池百合子知事は2030年までに脱エンジンを達成するとしていた。
日本を含めて世界中がEV転換の大合唱をしてきたのに、いま何が起きているのか。
本当に地球環境に優しい自動車は?
私は、EVがある程度普及したことにより、その不便さがクローズアップされたのだと思う。
当初からいわれていたことだが、EVは航続距離が短く、充電に時間がかかる。充電設備も十分あるとは言えない。頻繁に乗らないと、バッテリーの劣化が早く進んでしまう。
さらに寒波に襲われると、充電装置の性能が低下するため、充電自体ができなくなるという致命的な欠陥も指摘されている。何より、EVはガソリン車と比べて、運転そのものが楽しくないのだ。
EVの思わぬ失速は、これまでEV化の波に乗り遅れてきた日本の自動車メーカーに追い風となっている。
しかし、問題はそれだけではない。EV化に足並みを揃えて、自動車メーカーは、自動運転に代表されるように、自動車を機械装置からスマホのような情報機器に変貌させようとしてきた。
その際に必要となるのが、人工知能と大量の半導体だ。いま、株式市場ではその2分野が原動力となってバブルを起こし、世界的な株高が起きている。
もしEV化の波が今後失速するとすれば、そうしたバブルは崩壊するのだ。
もちろん、いまのEV不振は一時的な踊り場で、最終的には全車がEV転換するという見立ては根強い。しかし、それが本当に望ましい未来なのか。
もともと私は、ガソリン車の販売を禁止するような規制には反対だった。EV化推進は、地球環境破壊を止めるための手段とされてきたが、EVが即座に環境に優しいということはない。
大型のEVと軽のHVを比べたら、明らかに環境に優しいのは軽自動車の方なのだ。
それでも欧米や中国がEV化に熱心だったのは、部品点数が少なく製造が容易なEVで日本の自動車産業を凌駕しようと考えたからだ。
その目論見が、少なくとも現状では、音を立てて崩れようとしているのだ。
私は、日本政府が採るべき道は、もう一度、本当に地球環境に優しい自動車はどのようなものかという国際的な議論を提起することだと考えている。
全車EVよりも、地に足のついた省エネ車の普及を進めることのほうが、私には明るい未来に見えるのだ。
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