監督/塙宣之
出演/青空球児・好児、おぼん・こぼん、ロケット団、宮田陽・昇、たにし、U字工事、ねづっち、大空遊平、はまこ・テラこ、錦鯉、ビートきよし(特別出演)、爆笑問題(友情出演)、サンドウイッチマン(友情出演)
配給/KADOKAWA 角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー中
この映画紹介コーナーのすぐ近くのページに連載を持たれていて、TBSラジオ土曜朝9時の『ナイツのちゃきちゃき大放送』でもご一緒しているナイツ塙さんの初監督作品。実は、北野たけし監督作品のようなフィクションだと思って見始めました。
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冒頭、浅草東洋館の舞台を1人で雑巾がけする塙さんのシーンから始まります。ピカピカになった舞台にゴロリと仰向けになって天を仰ぐ。そこから「事件」が始まると思ったわけです。
というのも、自分はナイツの独演会へ毎年伺わせてもらっているんですけれども、その中で塙さん自身が出演している刑事ドラマのパロディーコントをやったことがあった。
本作もそんな刑事モノかと思ったら、2023年から塙さんが会長を務める漫才協会の芸人たちを追ったドキュメンタリーでした。
ただ、刑事事件こそ起こらないものの、登場する芸人たちは我々の予想を超える悲喜こもごもを抱えて生きていました。ある意味「事件」モノのドキュメントと言ってもあながち間違いではないかと。
芸人たちの生き様は、「事件」に満ちている!
塙さんは協会の中枢に立ってからこの方、協会の「広報活動」に心血を注いでいるように見えます。特に、日の当たらない師匠たちを再々ネタにすることで耳目を集め、お客に1人でも多く舞台に足を運んでもらえたらという「漫才愛」が滲み出ています。
本作も「そんな塙さんの奮闘ぶりにちょっと付き合ってみるか」というようなつもりで見ていただけたらと。ま、映画館の大スクリーンで見るかどうかなのですけれども、できるだけ画面の小ぶりなミニシアターの方がいいのではと思われます(笑)。
そして、面白いじゃないかと思われたら、東洋館に出かけて生の舞台を見て欲しいですね。
今、若い人が吉本の劇場に行ったりしていますが、いつ行っても次から次へとお笑いが見られるというのは、そもそも寄席のシステムですから。TVで見る芸人さんたちも登場しますし、ナイツも結構な頻度で出ています。
しかし大半は、本作のような不思議な方々の集合体です。木戸銭を分け合って暮らすリアルな生活が明らかにされるわけで、ベテランになればなるほど悲哀が隠せません。
さて、本作に風格をもたらしているのがナレーション担当の小泉今日子です。
先頃、「今のバラエティーはくだらない」発言で物議を醸しましたが、ご本人は一日中寄席に居てずっと見ていたりとか、漫才や落語が大好きな上での発言だった模様。
キョンキョンがこの東洋館の演芸をどう評価しているのか伺いたいところです。
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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