芸能

蝶野正洋『黒の履歴書』~スポーツの安全性と問題点

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

格闘技の安全性がいま一度、取り沙汰されている。

ボクシングで最終ラウンドまで激闘を展開し、判定で敗北した選手が試合後に倒れて病院に搬送され、手術をしたものの意識不明のまま息を引き取った。

不幸な事故となってしまったが、どうにかして防ぐことができなかったのか検証して、再発防止に努めるべきだと思う。


【関連】蝶野正洋『黒の履歴書』~テレビ業界に蔓延る“捏造体質” ほか

選手の体調管理はもちろん、最悪のケースを防ぐためには、レフェリーやセコンドの判断で試合を止める基準の見直しも必要かもしれない。

器具の安全性を高めるという方法もある。グローブの素材や大きさを改良するとかね。ダウン時に頭を打ってしまうことを考えると、リングにも工夫の余地があるかもしれない。

柔道は畳敷きが基本だけど、今は柔らかなマット上で試合をすることもあるし、衝撃吸収性の高い特殊な畳が開発されていたりするからね。

スポーツのアクシデントを防ぐために…

プロレスも、その歴史が始まった頃はボクシングと同じリングを使っていた。世界的にボクシングとレスリングのコミッショナーはだいたい同じ組織が兼任していて、リングも共用されることが多かったんだよ。

やがてプロレスが進化すると、派手なアクションが取れるスプリングの利いたリングが使われるようになっていた。

俺がヨーロッパに海外遠征していた頃は、まだ硬いリングを使っていたエリアもあった。ウィーン(オーストリアの首都)で試合した際は、板の間にキャンバスを張っただけのようなボクシング用のリングで、かなりキツかった記憶がある。

安全面で言うと、ボクサーなどが試合前に行う過酷な減量も問題になっている。

先日、日本の24歳のキックボクサーが試合前日の計量前に急死し、「過度な減量が原因だったのでは」とも報道された。

計量前に水分を取らないことで、一気に体重を落とす「水抜き」と呼ばれる減量法が広まっていて、その危険性も指摘されている。

体格的に本来は一つ上の階級なんだけど、ギリギリまで絞って計量をパスし、直前に体重を戻して試合を有利にしようとする選手も多い。

以前よりも、体重による階級分けがより細かくなったことで、こうした戦術を取り入れる選手が増えたようだね。

プロレスにも階級があって、今の新日本プロレスの規定では体重100キロ以上がヘビー級、100キロ未満がジュニアヘビー級となっている。

若手時代なんかはとにかく「体を大きくしろ」と言われるけど、この無理な増量も本当は体によくない。短期間に体重を増減させる行為は、内臓なども含めて体にダメージを与えるんだよ。

俺は今、糖尿病の治療をしているんだけど、やっていることは根本的にダイエット。基本は食事制限で、それがうまくできない人には食欲を抑える薬を使ったりする。

もしかしたら、減量中のスポーツ選手が、こういう薬を使ったりするケースもあるんじゃないかな。現在のドーピングの基準には引っかからないかもしれないけど、薬というのは必ず副作用があるから規制が必要だと思うよ。

スポーツのアクシデントを防ぐためにも、まずは実態に即した新たなルールを作るべき。そして、選手に対するメディカルチェックを厳密にやっていくべきだろう。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

あわせて読みたい