初場所後、大関に昇進した琴ノ若(26、佐渡ヶ嶽)のおめでたラッシュが止まらない。2月9日も、埼玉県内で行われた母校・埼玉栄高校の全国大会優勝祝賀会に来賓として出席するなど大忙しだ。
この様子を、おそらく朝乃山(29、高砂部屋)は苦々しい思いで眺めていたに違いない。
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新大関の誕生はここ4場所で霧島、豊昇龍に続いて3人目だが、またしても昇進争いで琴ノ若に先を越されてしまったからだ。
「5場所前まで大関は貴景勝1人だったが、いまや4大関。5大関、6大関の時代もあったが、満杯状態です。この中に割って入るのは、よほどの実力者か幸運の持ち主ということになる。大関を陥落し、復帰を目指す朝乃山には非常に厳しい状況です」(担当記者)
焦る思いは関係者も同じだ。琴ノ若の新大関昇進が決定したまさに同じ日。東京朝乃山後援会主催の「新年激励会」が行われたが、関係者、来賓のあいさつは激励一色だった。
初場所も7日目まで優勝争いの単独トップに立ちながら、8日目の玉鷲戦で右足首を痛めて休場、9勝3敗3休に終わった朝乃山も「次の大阪場所では、しっかりと稽古に励み、期待に応えられるように頑張っていきます」と深々と頭を下げるしかなかった。
先代夫人の親心
もっとも、そんな朝乃山に、前例のない激励の品が贈られたことが分かった。
昨年11月に小腸がんで逝去した先代高砂親方(元大関朝潮)の「お別れの会」が5日、東京都内のホテルで開かれた。朝乃山は近大の先輩であり、自分を発掘してくれた恩人をしのぶこの会に参列したが、その際に「去年の九州場所後、形見に遺体の手足から切った爪をもらった」と明かしたのだ。
先代夫人の恵さんも、「朝乃山には早く、また大関になってもらおうと思ってあげました」と話している。
朝乃山はその爪をお守りに入れて大事に保管し、この初場所は毎日、それを忍ばせて場所入りしたという。それが途中休場したものの、9勝3敗3休という好成績に繋がったのだ。
3月10日から始まる春場所も持参する予定というが、爪のご利益やいかに。
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