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『ファラオの密室』著者:白川尚史~話題の1冊☆著者インタビュー

『ファラオの密室』宝島社
『ファラオの密室』宝島社 

『ファラオの密室』宝島社/1650円

白川尚史(しらかわ・なおふみ)
1989年、神奈川県横浜市生まれ。東京都渋谷区在住。弁理士。東京大学工学部卒業。2012年に株式会社『AppReSearch』(現株式会社『PKSHA Technology』)を設立し、代表取締役に就任。2020年に退任し、現マネックスグループ取締役兼執行役。『ファラオの密室』は2023年の第22回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。

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――東京大学在学中は機械学習を学び、現在はマネックスグループの取締役だとか。小説を書こうとしたきっかけは何だったのですか?

白川 幼い頃から本に囲まれて育ち、いつか自分も作家になれたらという憧れを常に持っていました。そうした中、起業した会社が上場して数年経ち、取締役を任期満了で退任して一段落ついたタイミングで、ビジネスだけでなく創作活動にも打ち込んでみようと思ったのが筆を執ったきっかけです。

――エジプトを舞台にミイラの探偵が活躍するというのは、かなり思い切った切り口ですね。

白川 せっかく新人賞に応募するのですから、未知の世界を描きたいという野望がありました。エジプトというのは、まだまだ研究途上であるということを含め、絶好の題材だと感じました。ツタンカーメンはエジプト史ではむしろ追いやられ、歴史から葬られそうになった王です。そのために盗掘を免れたという背景があるのですが、こうした皮肉な運命も私には魅力的に映りました。主人公をミイラにするというのも、ごく自然に出てきた発想でした。

古代エジプトの魅力満載

――事件解決への3日間というタイムリミットに読者もハラハラしっぱなしです。プロットを考える際、注意した点、苦労した部分などはありますか?

白川 小説を書き始めて2年半の間、新人賞への応募を通じ、自分にしっくりくる型を探ってきた感じです。過去の作品で、タイムリミットを明示することでストーリー全体が引き締まることを実感し、今回もそれが際立つように工夫しました。ただ、実際は〝型に当てはまるように書く〟というより、〝書いてみた物語を型に当てはめてみて足りない要素を浮き彫りにする〟という側面が強いです。今回はエジプトのことを綿密に調査したおかげか、種々の要素が有機的に絡み合い、一連の仕掛けがうまくいった手応えがあります。

――本作の見どころと、できれば次回作の構想を教えて下さい。

白川 古代エジプトの魅力を存分に味わっていただきたいです。すでに読んでいただいた多くの方から、「読む前はとっつきづらく感じたが、読み始めたらとてもスラスラ読めた」とお言葉を頂いており、むしろ古代エジプトのことをご存知ない方にこそ手に取っていただきたいと思います。今後の構想としては、引き続き古代の各国を舞台にする物語のほか、現代や近未来でテクノロジーを主とした本格推理小説にも挑戦してみたいですね。楽しみにしていただけると幸いです。
(聞き手/程原ケン)

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