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専門家が警鐘!「能登半島地震」で地殻活発化!? 南海トラフ地震を誘発か

Sean Pavone
能登半島地震で一部崩れてしまった見附島 ※地震発生前(画像)Sean Pavone/Shutterstock

2024年元旦に起きた「能登半島地震」は大津波警報を発令。地割れや家屋の倒壊が相次ぎ、現在も死者や安否不明者が増え続けている。だが、恐ろしいのはこの大地震が新たな地震を誘発する可能性が指摘され始めたこと。南海トラフ地震との関連性が取り沙汰されているのだ。

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「一年の計は元旦にあり」というが、そんな人々の厳かな思いを打ち砕く事態が勃発した。年が改まったばかりの能登半島をM(マグニチュード)7.6、最大震度7の直下型地震が襲ったからだ。

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大地震が起きたのは、元日の午後4時10分。震源は石川県穴水町の北東42キロ、深さ16キロの地点とされるが、日本海側の広い範囲に津波警報が出され、能登半島には5メートルを超える津波の到達を予測する「大津波警報」が発令されたのだ。

能登半島の先端にある同県珠洲市の漁港では複数の船が転覆し、陸地では無数の家屋が倒壊。恐ろしい地震の痕跡を見せつけるかのごとく、一部の海底が海面に隆起したほどだった。

また、震度6強の揺れに見舞われた同県輪島市では7階建てのビルが横転。同日夕方には観光名所の「朝市通り」で火災が起きて約200軒が燃え、辺り一面焼け野原となった。

「さらに石川県だけでなく、新潟、福井、富山、長野、岐阜でも地割れや土砂崩れ、家屋が倒壊。国土地理院はこの地震により震源に近い地点で最大約3メートルの地殻変動があったと発表したが、被害は1月7日時点で死者126人、安否不明者222人と深刻で、今も増え続けているのです」(取材にあたった報道関係者)

気象庁によると、1日の大地震発生から6日午後までに同地方を震源とする地震は560回を超えたが、巨大地震発生の原因を解くカギは、群発地震にあるとみられている。

実は能登半島では2020年12月ごろから群発地震が起きていたが、昨年5月にM6.5、最大震度6強の地震が発生。これ以降、珠洲市を中心に起きていた地震が、能登半島の北の海域と陸地の両方で起きるようになっていたのだ。

巨大地震が起きた原因は…

科学ライターが言う。

「能登半島では約2年半の間に震度1以上の地震が400回以上も起きていたが、地下を走る10本弱の活断層が原因だといわれている。太平洋側から日本列島の下に沈み込んだ太平洋プレートから溢れ出た大量の水が、断層を滑りやすくさせ群発地震が発生。今回の地震も、この断層がズレて起きたとみられているのです」

地震学者によれば、今回の地震は「阪神淡路大震災(M7.3)の3〜8倍ものエネルギーが放出された」というが、巨大地震が起きた原因は他にもあるという。

武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が語る。

「私は地下にあるマグマが上昇したことで熱せられた岩盤が誇張し、それが巨大地震につながったとみている。活断層が動いたり地下水が岩盤を滑りやすくさせたなどの理由はあるにせよ、一番大きな原因はこのマグマだと考えているのです」

島村氏が言うマグマの上昇が地震を招いた例としては、長野県松代町(現長野市)で起きた松代群発地震が挙げられる。同地震は1965年から約5年続いた群発地震で、有感地震の数は震度5強を上限に6万2826回、震源の深さも常に7キロ未満と浅かった。加えて、地下にマグマだまりがあったともいわれ、今回の地震と似通っているのだ。

また、一方では今回の地震の原因にプレート論を持ち出す研究者もいるという。

ご存じの通り日本列島は太平洋、フィリピン海、北米、ユーラシアと名の付く4つのプレートにまたがるように位置しているが、今回の地震はユーラシアプレートと太平洋プレートの境界部で起きている。

そのため、近年活発化が著しい太平洋プレートが西日本沖合に沈み込むフィリピン海プレート、さらに東日本を頂く北米プレートを挟んでユーラシアプレートを刺激し、大地震を発生させた可能性も否めないのだ。

科学ライターが続ける。

「さらに、ユーラシアプレートのひずみがあちこちで限界を迎えているとの見方もある。同プレートが震源とみられる地震がここ数年来増えているからです。2022年9月17・18日に発生した台湾の台東地震(M6.5・M6.9)や翌年2月に起きたトルコ・シリア地震(M7.7)、同12月に発生したフィリピンミンダナオ島地震(M7.7)などがそれ。そのため、今回の能登半島地震もこのプレートのひずみが原因と考える研究者がいるほどなのです」

能登の地震は巨大地震の〝前震〟か!?

もしも、今回の地震の原因が太平洋プレートの活発化とユーラシアプレートのひずみにあるとすれば、今後もユーラシアプレートの境界部で、巨大地震が起きる可能性が高いことになる。

この説が恐ろしいのは、東シベリアやインド、アラビア両半島を除くユーラシア大陸の至る所で地震が起きる可能性があるからだが、日本にとって見逃せないのは〝あの地震〟が起きる可能性も高まるからなのだ。

「それが近年、我が国で危惧され続けている南海トラフ地震です。東海から九州地方沿岸部まで延びる南海トラフは、まさにユーラシア大陸とフィリピン海プレートの境界部にあたる。ここにたまったひずみが解放されて大地震が起きるため、能登半島地震を南海トラフ地震の〝予兆〟とみる向きもあるほどなのです」(科学雑誌編集者)

事実、歴史をたどると南海トラフ地震の前後には決まって内陸直下型地震が頻発していたことが分かっている。

前出の地震学者が続ける。

「例えば、1854年の12月23・24日に起きた安政東海地震(M8.6)と安政南海地震(M8.7)は、南海トラフの東と西側を震源とした大地震だが、その前後には長野の善光寺地震(1847年・M7.4)、富山と岐阜の県境を震源とした飛越地震(1858年・M7.1)が起きている。また、1944年の昭和東南海地震(M7.9)と2年後に起きた昭和南海地震(M8.0)の前後には、鳥取地震(1943年・M7.2)、三河地震(1945年・M6.8)も起きているのです」

そのため、今回の能登半島地震や2000年に発生した鳥取県西部地震(M7.3)、さらには2016年の熊本地震(M7.3)などは次なる南海トラフ地震の〝前震〟とみられているのだ。

科学ライターが言う。

「前回の南海トラフ地震とも言える昭和東南海地震・昭和南海地震からすでに70年以上がたつが、西日本などで大きな直下型地震が発生し始めたのは20年ほど前から。これは南海トラフ地震が活動期に入った証拠だとも言えるのです」

もっとも、気になるのはもしも巨大地震に見舞われた場合、どうすれば生き残れるかだが、これには備えと心がけが必要なようだ。

防災ジャーナリストの渡辺実氏が指摘する。

「防災には生き残る力と生き延びる力がある。前者としては、被災しても生き残れるように地震の前に住宅や職場の家具の転倒防止作業を行っておくこと。約8割の人が耐震性の低い建物に住んでいるとのデータもあるので、チェックが必要です。飲料水は1人1日3㍑の水が必要となるため、浴槽やペットボトルに水道水を入れて1週間分備蓄する。また、ペット用の消臭砂は人間のトイレとしても活用できる。カセットコンロや缶詰、カロリーメイト、レトルト食品なども日ごろから備蓄が必要です」

また、地震発生時に生き残る確率を高める策としては、「頭を守ること」と「周りで何が起きているか把握すること」が大切だという。

「そのため、スマホと充電器は必須アイテムです。揺れの収束後も地震と火災はつきものであることを思い出し、ラジオや自分の目や耳で情報を得て安全に避難する。避難所や在宅で避難生活を送る場合は生き延びるために前述の備蓄品に加え、被災者生活再建支援法や災害救助法を利用し、行政の支援を仰いでいただきたい」(渡辺氏)

南海トラフ地震は我が国が最も懸念する大地震だが、今は能登半島地震で被災したすべての方々の無事と復旧を祈りたいと考えるのは、本誌だけではないだろう。

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